北京から約250kmの河北省唐山市の曹妃甸(そうひでん)工業区では、初夏の晴天下にペンペン草が生い茂っている。建築途中のビルや道路がなければ、大草原のように見えることだろう。
現金が不足している。株は暴落する。なぜなら資金が有効に使われていないからで、その影響は早晩やってくる。それが中国に新しい政府が誕生して100日が過ぎた、今やってきたのだ。
李克強首相の100日
初めてのリノミクス
3月中旬の全国人民代表大会が終わり習近平・李克強体制が誕生し、新政権は6月の終わりに100日目を迎える。
長く経済委員会に勤め、経済に強い朱鎔基元首相、地質学の専門家で、在任十年の間にGDPで日本に追いついた温家宝前首相であっても、それぞれ「朱鎔基経済学」、「温家宝経済学」というような呼び名は聞いたことはなかった。しかし、李首相の時代となると、日本に「アベノミクス」があるごとく、中国では「リノミクス」という呼び名が取り沙汰されている。
リノミクスの内容について、中国のマスコミは行政体制、金融、農業などの各分野での改革、政府官僚の消費の節減、民生の保障などの特徴をあげている。金融に限って言えば、「既存資金を有効に生かす」(盤活存量資金)方針を、李首相は6月の1ヵ月間に重要な会議の場で繰り返して主張した。
「穏健な貨幣政策を堅持し、それを立派に生かして、合理的な貨幣量を保持していく」と、6月19日の国務院常務会議では李首相は強調した。
言い換えれば、銀行などが無制限に住宅や工業区建設にカネを出し、きちんと資金の回収を考えずに、貸せるカネはいくらでも貸していたのだ。カネがなくなったら、いままでは中央銀行から資金をもらいさえすれば済んだが、李克強時代になるとそうはいかない。李首相は、これ以上の金融緩和、財政出動はないのだと言っている、と中国の金融界には聞こえている。