来月の参院選は、民主党にとって後のない戦いになる。ところが、民主がきのう発表した参院選マニフェスト(政権公約)を読む限り、そうした危機感が伝わってこない。[記事全文]
血を分けた民族がいのちを奪いあった朝鮮戦争は、63年前のきのう、北朝鮮の侵攻によって始まった。400万人以上が犠牲となって3年後に休戦したが、公式にはいまなお戦争が続い[記事全文]
来月の参院選は、民主党にとって後のない戦いになる。
ところが、民主がきのう発表した参院選マニフェスト(政権公約)を読む限り、そうした危機感が伝わってこない。
総選挙、都議選と、たてつづけに惨敗を喫した。参院選で踏みとどまり、党再生の足がかりを得ることができるか。まさに正念場である。
マニフェストに工夫をこらしたあとは見える。
漫画を使って、わかりやすくしたのは、そのひとつだ。給料も年金も上がらないのに物価が上がる国民の苦労を描き、「今の政府の経済政策には強い副作用がある」と指摘した。
では、アベノミクスに代わる経済再生の道筋とは何か。それがはっきりしない。財政再建にしても成長戦略にしても、説得力ある対案を示さなければ、政権に批判的な有権者の受け皿となることはできまい。
原発政策では「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とした。昨年の衆院選公約と同じ表現だ。
だが、自民党は公約に休止中の原発の再稼働推進を明記するなど、民主党政権が決めた脱原発路線からのあからさまな転換を図っている。なぜ正面から「待った」をかけないのか。
環太平洋経済連携協定(TPP)についても「推進」をうたいながら、「国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む」と、どっちつかずである。
政権与党時代、民主党は消費税率引き上げなどをめぐって内紛を繰り返し、国民の信頼を損なった。原発やTPPで踏み込めないのは、主要政策でいまだに党内をまとめきれない現状を物語っている。
憲法改正への対応にしてもそうだ。改正の発議要件をゆるめる96条の先行改正にこそ、明確に反対する方針を掲げた。
しかし、改正そのものについては「未来志向の憲法を国民とともに構想」とするなど、ここでも党内の護憲、改憲両派に配慮したためか、抽象的でわかりにくい表現になった。
海江田代表は、マニフェストの冒頭、手書きで「生活者、働く者の立場という原点に立ち返る」と書いた。
それを有権者に納得してもらうためには、これからの論戦を通じてマニフェストに肉付けし、政策の方向性を明確にしていくしかない。
野党に転じ、挑戦者として臨む参院選だ。民主党は逃げてはならない。
血を分けた民族がいのちを奪いあった朝鮮戦争は、63年前のきのう、北朝鮮の侵攻によって始まった。
400万人以上が犠牲となって3年後に休戦したが、公式にはいまなお戦争が続いている。軍事境界線をはさんで南と北は日々にらみあったままだ。
その南北の間で今月、久しぶりに高官級会談を開くことが合意されたが、あっけなくご破算となってしまった。
北朝鮮のかたくなな態度はあいかわらずだ。しかし、今回ばかりは韓国にも、もっと柔軟性を発揮して、対話にのぞんでもらいたかった。
韓国側は、会談に統一相を派遣する代わりに、北朝鮮の金養建(キムヤンゴン)・朝鮮労働党統一戦線部長の出席を求めたが、決裂した。
金氏は、金正恩(キムジョンウン)第1書記にも近いとされる対南政策の責任者だ。北朝鮮の独特の体制を考えると、最初から出席を求めるのは難しいと指摘されていた。
弾道ミサイル発射の動きなど挑発を続けてきた北朝鮮はこのところ態度を一変させ、朝鮮半島の非核化をめぐる6者協議への復帰も示唆しはじめた。
その真のねらいは、最大の交渉相手である米国を直接対話に引き出すことだ。そのため韓国の朴槿恵(パククネ)政権は、形だけの対話を避けようと、あえて実力者の出席を求めた。
だが、どんなレベルであれ、対話自体は北朝鮮を利することにはならない。重要なのは、その中身であり、意思疎通の芽を育てることだ。朴大統領はかねて、南北間に信頼を積み上げ、難題を一つずつ解きほぐしたいと訴えてきたはずだ。
確かにこの60年間、韓国は常に脅威にさらされ、市民を巻き込むテロや攻撃も受けた。それでも、歴代政権はなんとか話し合いで緊張をほぐしてきた。本格的な南北の対話ができずに終わった李明博(イミョンバク)・前政権の二の舞いになってはいけない。
南北の対話は、日朝、米朝の2国間協議や、6者協議のいわば土台でもある。日米は韓国を完全に置き去りにして北朝鮮と取引することはできない。
分断された民族同士の歩み寄りと共存を模索するプロセスが、北東アジアの長期的な安定をもたらすからだ。
国際社会は、金正恩体制に核とミサイルを放棄させ、平和がもたらす経済的利益を理解させねばならない。そのためにも韓国は現実的な対北戦略を描き、対話を率先して進めるべきだ。
20世紀の冷戦構造がそのまま残った朝鮮半島のパズルを解く主役は、韓国自身なのだ。