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第2話:彦星の憂鬱2
――7月7日・朝――

「…ひか……ゃん…」

何か柔らかい物が右側あるな……。

抱きまくらかな?

「…ふふっ…よ…れたらし…る…」

いや…俺は抱きまくらなんて持ってないな……。

「ひ…るちゃん……おたん…ょうび…めでとう…」

!!?

何やら寒気のような物が背筋を駆け上がっていくのを感じ、両方の瞼を開き、タオルケットを足で思い切り蹴飛ばし、上体を起こした。

「きゃっ!?」

なにやら悲鳴と床に何かが落ちた音が聞こえた気がするけど……気のせいだろう。


「…痛いよ輝ちゃん……せっかく添い寝してたのに……」

………気のせいじゃなかったらしい……。

ベッドに手を掛けて立ち上がってきたのは……って、うわッ!!

「や…弥生<やよい>姉!…そ…その格好はっ…」

「んっ?
だってこの時期にパジャマ着てたら暑いでしょ?」

「でしょ?……じゃねえだろ!?
そもそも何で、下着姿で俺のベッドに入って添い寝してんだよ!!?」

そう弥生姉は上下お揃いの水色のブラジャーとショーツしか身に纏ってないため、身長は小さいながら、豊満かつ、メリハリのある肢体のほとんどを露になっているのだ。


――久遠寺弥生<くおんじやよい>。
艶やかな長い黒髪と透き通るような白い肌。
垂れ気味の目は大きく、右目の下の泣き黒子が印象的だ。
そんな白と黒の中にあって、桜色の唇がアクセントになっている。

身長は153cmらしいが、それに不釣り合いなサイズの胸。
人でも撲殺するつもりなのかと聞きたくなるその胸は、今でも絶賛成長中らしい。
そのくせお腹は引き締まっていて、お尻はふくよかな安産型とまさしく砂時計のような体型をしている。

ちなみに俺より2歳年上で久遠寺家の長女なのだが、そんなの関係なしに元からの極度のブラコンのため、久遠寺家の習慣、近親婚をラッキーとすら思っているらしい――


「えへへッ……だって今日は七夕だよ?
待ちに待った輝ちゃん解禁の日なんだよ」

「弥生姉…人をボジョレー・ヌヴォーか何かと一緒にすんなよ!」

「輝ちゃん…」

俺の言葉は完全にスルーらしく、俺の両肩を掴む弥生姉。

「お誕生日おめでとう!
そしていただきます…」

「ぎゃああああッ!!」

弥生姉の顔が接近してくるのを頭を左右、後方に振ることで回避する。

「輝ちゃん、何でお姉ちゃんから逃げるの!」

「じゃあ何でキスしようとしてくるんだよっ!」

「お姉ちゃんだもん!」

「そんなもん理由になるかっ!!」

「もう…輝ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだから……」

ついに業を煮やした弥生姉は俺に跨がり、腕を背中に回して体を密着させてきた。

「や…弥生姉待った!……何かとてつもなく柔らかい物とかが当たってるからッ!」

「当たってるんじゃなくて当ててるんだよっ!
それに……輝ちゃんの硬いのもお姉ちゃんのアソコに当たってるよ……」

「ちょッ…待て弥生姉!
…これは健全な男子高校生の朝の生理現象であって実の姉に欲情してるとかでは断じてないぞ!!」

俺はこの時期はTシャツ1枚とパンツしか履かず寝ているため、今現在弥生姉の股間と俺の股間にぶらさがっている朝の元気さを発揮しているモノは、お互いのパンツしか隔てる物はなく、その……とても危険な状態となっている。

それに加え、弥生姉の胸のビッグメロンが押し付けられ、弥生姉からする甘い臭いに頭がクラクラする。

「輝ちゃんもやっとその気になってくれたんだね!
……それじゃあこのままお姉ちゃんと…」

「待て!!頬を赤らめるな!!尻をそこに置いたままグリグリするな!!
誰か……誰か助けてッ!!犯されるぅぅ!!!」

さよなら俺の童貞……。
いらっしゃいませ近親相姦野郎……。

「朝からなんつう叫び声を上げてるのよっ!!
近所迷惑だこの馬鹿輝!…って、ぎゃああああ!」

部屋のドアが勢いよく開かれ、部屋の入口から声が聞こえた途端、その声が悲鳴に変わった。

しかし、これはチャンスだ。
天はまだ俺を見放してはいなかった。

おかえり俺の童貞…。

「飛鳥<あすか>姉ナイスタイミング!
早く弥生姉を……って、飛鳥姉!!」

部屋の入口に立つ天からの使者、久遠寺家の次女・飛鳥姉の姿を確認し、俺は驚愕の叫びをあげる。

「あ…飛鳥ちゃん何その格好は!?」

「べ…別にさっきまでシャワーを浴びてて、まだ服を着るのが暑かっただけよ……。
だいたい弥生姉だって何で下着姿で輝の部屋にいるのよ!?
それに弥生姉は今日大学の授業ないのに何でもう起きてるのよっ!?」

「今日は輝ちゃん解禁の日だもん!!
むしろ私は一睡もしないで輝ちゃんに抱き着いてたんだからっ!!」

弥生姉の言葉に軽く頭痛を感じながら、俺はもう一度、飛鳥姉の格好を確認した。

――久遠寺飛鳥<くおんじあすか>。
久遠寺家の次女にして俺の1歳年上の姉さん。
茶髪のショートカットの髪型と、近所のプールでバイトしてるため、こんがりと日に焼けた肌が活発な印象を与える。
目尻が吊り上がった目は、怒ると男の俺ですら物おじするほどの眼光を放つ。

身長は170cm近くのすらーっとした長身で弥生姉と並んだらどっちが姉かわかったもんじゃない。
ただ身長は飛鳥姉が完勝なのだが、胸やお尻のサイズは完敗だった。
まな板とまでは言わないけどささやかな胸。
毎日かかさず腹筋をしているため、お腹周りに無駄な肉はなさそうだ。
そしてこれまた無駄な肉のほとんどない小振りなお尻。

弥生姉とは正反対のような体型の飛鳥姉なのだが、今は黒い上下お揃いのブラとショーツしか着けていなかった――


さて、この飛鳥姉なのだが――

「飛鳥姉まで何を……」

「うるさい馬鹿っ!
別にあんたに見せたかったとかじゃなくて……」

いわゆるツンデレなのである。
弥生姉に負けず劣らずのブラコンで身の回りの世話をよく焼いてくれる。

「それより輝!あんた学校は?」

「えっ?……だって目覚ましはまだ鳴って……」

時計に視線を向けた俺は絶句した。

現在の時刻は8:05。
俺は高校まで自転車通学で、通学時間は30分で朝のSHRの開始が8:35分だから――

「今すぐ出なきゃ遅刻じゃねえか!?
弥生姉離れろっ!」

「い…嫌ッ!」

とりあえず弥生姉を後方に倒そうとしたのだが、弥生姉は俺の背中にがっちり手を回してるわけで離れてくれない。

「あと5分…」

「待てるかっ!!」

「じゃあチューして!」

「もっと無理だ!!」

「輝ちゃんは我が儘…ひゃっ!…ちょっと!……飛鳥ちゃん!…ひゃ!」

「いい加減輝から離れなさいよ!」

そう言って弥生姉の腋の下や脇腹をくすぐり回す飛鳥姉。
堪らず弥生姉の腕から力が抜け――

「サンキュー飛鳥姉!」

弥生姉の拘束から脱出に成功した俺は、急いで学校の制服を身に纏い、昨日のうちに準備を済ませておいた鞄と携帯電話を持って自分の部屋から出て、階段を駆け降りる。

「飛鳥ちゃんの馬鹿ぁ!
なんで輝ちゃんを逃がしちゃうの!?」

「馬鹿なのは弥生姉でしょ!?
どうせ目覚まし切ったのも弥生姉でしょ?」

「だって……輝ちゃんがスッゴク気持ちよさそうに寝てるのを邪魔しようとするから……」

そんな声が俺の部屋から聞こえてくるが、今はとりあえず無視だ。

玄関から飛び出し、自転車の鍵を開け、急いでペダルを漕ぎはじめる。

携帯で時間を確認すると現在の時刻は8時10分。

急げばギリギリか?

とにかく俺は学校に向けて自転車のペダルを親の仇のように踏み付けた――


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