警告
この作品は<R-18>です。
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第1話:彦星の憂鬱1
チャイムの音が止まるのと同時に教室の中に駆け込む。
「みんな朝のSHR<ショートホームルーム>を始めるので席について」
俺が教室に扉をくぐった直後、教室の前のドアから担任の那須陽一<なすよういち>が入ってきて、声をかけた途端、クラス中の喧騒が止みSHRが始まる。
何とか遅刻せずにすんだか…。
俺は安堵しながら、黒板に向かって1番左の列、窓に面した列の1番後ろの席に座り、鞄を机に置きファスナーを開く。
「今日は遅かったじゃねーか彦星<ひこぼし>」
俺の隣の席に座る、金髪の男子生徒・織田信貴<織田のぶたか>が担任が話す邪魔にならない程度の声量で話し掛けて来る。
「今日は朝からイロイロあったんだ…」
鞄の中身を机に移し替えながら俺も小声で答える。
――信貴は金髪のベリーショートの頭髪。
切れ長の目と細く整えられた眉毛。
基本的に不敵な笑みを浮かべている唇。
そんな顔立ちに加え、だらし無く前が開けたワイシャツからは首元のシルバーのネックレスが見えているため、その風貌はどこから見ても不良生徒だ。
……確かに信貴は喧嘩が強く、チンピラのような格好をしているのだが、性格は気さくで友達想い。
さらに前回のテストでは、学年1位というのだから驚きだ。
人を外見で判断してはいけないという事を人に伝えるのに、こいつほど適した人材はきっと他にいないだろう。
そして何より信貴は俺の親友だ――
「それじゃあ朝のSHRを終わります」
いつの間にかSHRが終わり、担任が教室から出て行く。
「ほらっ、彦星」
信貴がビニール袋を差し出してくる。
「これは…」
「今日は七夕だからお前の誕生日だろ?
誕生日プレゼントだ」
「信貴…サンキューな」
信貴がくれたビニール袋はこの高校――天ノ川高校<あまのがわこうこう>から1番近い駅との間にあるコンビニの物で、お菓子が数点と500mlの炭酸ジュースが1本入っていた。
「たいした物は入ってないけどな!」
そう言って親指を立てた右の拳を突き出してくる信貴。
「いや、スッゲー嬉しいよ……ありがとな」
弁当を食べた後にでも食べようと思い、ビニール袋を机の脇に引っ掛けた。
「それで彦星……朝からイロイロって何があったんだ?」
心配そうな表情で俺に問い掛けてくる信貴。
……どんだけいい奴なんだよコイツは…。
「イロイロって言っても、危険な事には巻き込まれてないから平気だ」
「そうか…それなら良かった」
丁度その時、授業開始のチャイムが教室の前方にある黒板の上のスピーカーから流れて来て、1時限目の古典の担当教師の源薫<みなもとかおる>が入ってくる。
俺は教科書とノートを机の中から取り出し授業を受ける準備をする。
――そういえば俺の自己紹介がまだだった。
俺の名前は久遠寺輝<くおんじひかる>。
高校3年生にして、自称・超常識人だ。
ちなみに信貴が俺を彦星と呼ぶ理由は単純な事で、俺の誕生日が今日――七夕だからだ。
何故かこの呼び方は周りにも定着してしまい、基本的に友達の俺の呼び方はこれで通っている。
さて、今日でめでたく俺は18歳になったわけだが……正直あまり喜べないでいる。
その理由は俺の家――久遠寺家に伝わる習慣のせいなんだが……これがなかなかに他人には相談できるような内容じゃないんだ…。
久遠寺家は有り体に言えばとてつもない金持ちだ。
1つの分野を極めるのではなく、経済のあらゆる分野に手を出すことで、歴代の頭首達は莫大な財産を築き上げてきた。
今やこの国の企業のほとんどに久遠寺家の息がかかってるとか、いないとか。
おまけにその力は政界や警察にも及んでいるらしく、ちょっとした軽犯罪なら揉み消せてしまうらしい。
さて、そんな久遠寺家には特殊な習慣がある。
これが超常識人の俺には困った物なんだが……久遠寺家の頭首は必ず身内の者、主に姉や妹と結婚しなければならないという、法律すら無視した習慣が存在するのだ。
『優れた遺伝子は優れた遺伝子と結ばれ、更に優れた遺伝子を生み出すべきだ』というのが初代久遠寺家の頭首様の有り難いお言葉だそうだ。
そして久遠寺家の次期頭首、つまり俺には18歳になったその日から子作りを始めなければならないという決まりまであるのだ――
「……はぁ…」
「どうした彦星?」
「悪い…何でもない」
「そうか」
信貴が教科書に視線を戻す。
ついつい頭の中の考えに溜息をついてしまった。
「この時源氏は……」
薫先生が源氏物語の説明をしているわけだが、今はあんな変態野郎の話しなんて聞く気にもなれず、古典の授業を受けるのを放棄して、今朝の出来事を思い返していた――
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