と、来た道を引き返そうとしたはものの……。
5分ほど走ったところで、雨脚はどっと強まり豪雨になってしまった。
雨霧が辺りに立ち込め、視界が白くけぶって辺りがあまり見えない。
既に頭から足の先までずぶ濡れで、着て来たTシャツもハーフパンツも雨で重たくなっている。
朝で気温が低いせいか、少し寒い。
「こんな状態で移動するのは危険だな。ちょっと雨宿りしよう」
「うん……」
雪也に腕を引かれ、花澄は道の脇にある杉の木の下に入った。
ポタポタと葉先から水が落ちてくるが、雨の中にいるよりは遥かにマシだ。
木の下に入ったところで、雪也は着ていたウインドブレーカーをばさっと脱いだ。
そのまま花澄の肩に掛け、前を寄せる。
花澄はドキッとし、雪也を見た。
……ウインドブレーカーから香る、ワイルドリリーの爽やかな香り。
ウインドブレーカーに残っている、雪也の体温……。