雪也は頬を歪め、自嘲するように笑った。
……めったに見ることのない、雪也の苦しげな表情。
花澄にはよく分からないが、雪也の心の中には雪也自身直視したくないような複雑な感情があるのかもしれない。
じっと見上げる花澄の前で、雪也は気分を変えるように辺りを見回した。
腕を上げ、時計をちらりと見る。
「そろそろ、戻ろうか?」
と言った、その時。
ポツリ、と水の粒が花澄の頬に落ちてきた。
ふと空を見上げると……。
遠くの空から、入道雲がむくむくと湧き上がってきている。
遥か彼方で遠雷が轟く音がする。
「……雨?」
雪也は呆然と空を見上げて、呟いた。
花澄もまさか、ここで天気が変わるとは思ってもみなかった。
「こんなに急に変わるなんて。まるで夕立みたいだな」
「そうだね……」
「急いで戻ろう」
「うん!」