環はその中の、
『Australian National University(オーストラリア国立大学)』
『University of Hong Kong(香港大学)』
の国費招待留学の募集要項を手に取り、じっと見つめた。
これらは年末まで募集しているため、まだ応募可能だ。
通るかどうかはわからないが応募してみる価値はあるだろう。
どちらも東大と同等レベルの大学なので、審査は相当厳しいだろうが……。
……状況が変われば、望むものも変わる。
花澄との将来を悲観していた頃は、普通に国内の奨学金で通える大学に行ければいいと漠然と思っていた。
しかし今は、もっと高みを目指したい、一日でも早く花澄との仲を認めてもらえる自分になりたいと思ってしまう。
雪也のように御曹司になるのは不可能だとさすがにわかっているが、それならばせめて、学歴だけでも雪也以上のものを得たいと思ってしまう。
あの奨学金がダメになったのは、ある意味天の計らいだったのかもしれない。
しかし……。