「花澄。私、以前に言ったはずよね? 雪也さんと私は高校を出たら婚約するって」
「……っ」
「雪也さんに相応しいのは私よ。間違ってもあんたじゃないわ」
美鈴の口から零れたその言葉に、花澄は目を見開いた。
……やはり、美鈴はそう思っていたのだ。
見下されていた、という事実が花澄の胸を抉る。
美鈴はプライドが高い。そう思っても何ら不思議ではない。
けれど……。
美鈴は自身の言葉の鋭さに気付いた様子もなく、続けて言う。
「あんたは分家で、しかも親は離婚している。工房も借金まみれで、うちの援助がなければあっという間に立ち行かなくなるわ」
「……っ、美鈴……」
「事実は事実として認識しなければ、あんたが辛くなるだけよ? ……もっとも、雪也さんのことだから、あんたを心配して送ってくれただけなんでしょうけど」