甲高い声と共に、扉がガラッと勢いよく開いた。

扉の向こうから、長く艶やかな黒髪を揺らして室内へと入ってきたのは……。


藤堂美鈴。花澄と同じ高校三年生。

花澄の父の姉・美織の娘で、花澄とは従姉妹にあたる。

雪也と同じ3年C組の所属で、去年までは華道部の部長も務めていた。

しっかり手入れされた黒髪に、紅い唇、黒く濡れたような二重の瞳。ぴしっとアイロンの効いた制服に、強い光を帯びた気品ある瞳。

まさに『良家の子女』をその身で体現しているかのような、生粋のお嬢様だ。

花澄とは昔はそれなりに仲が良かったのだが、中学に入った頃から美鈴は『本家の娘』としての教育を受け、今では二人の立場は全く違うものとなっている。

美鈴には美春という5歳上の姉がおり、ゆくゆくは姉妹のどちらかが本家を継ぐ予定だ。

美鈴は花澄をちらりと一瞥したあと、雪也に視線を向けた。

そのくっきりとした二重の瞳に可憐な笑みを浮かべて、雪也に歩み寄る。


「雪也さん。会長は……」

「達樹はまだホームルームやってたから、少し遅れるんじゃないかな」

「そう……。でも会長が来ないと、始められないわね?」

「んー……。オリエンテーションに参加するクラブのリストアップなら、会長がいなくてもできるんじゃないかな。先にできることはしておこうか?」

「そうね、雪也さん」



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