シーツのひんやりとした感触が、火照った頬に気持ちいい。
花澄はぼんやりとした意識の中、無意識のうちに火照りを冷ますようにシーツに頬を押し付けた。
遠くから、誰かの声が聞こえる……。
「……春燕に、花と……そうだな、ピアジェの1.5ctダイヤのネックレスを」
『……』
「ワインは去年の赤の1級のものを。……ああ、店は任せる。春燕の好みに合わせて、浩然が適当に決めてくれ」
ハスキーなテノールの声……。
花澄ははっと目を見開いた。
身を起こし、慌てて自分の着衣を確認する。
乱れがないところを見ると、どうやらまだ取り返しのつかない事態にはなっていなかったらしい。
花澄はほっと肩を下ろし、辺りを見回した。
────見覚えのない部屋だ。