────10:00。


花澄と暁生はホテルの最上階にあるバー『Lounge D』のカウンター席に並んで座っていた。

店内は大人向けの瀟洒で小奇麗な造りになっており、黒で統一されたインテリアと控えめな照明がムードある雰囲気を醸し出している。

カウンターにはクリスマスだからだろうか、小さなツリーが置かれ、その向こうではバーテンが手慣れた様子でシェーカーを振っている。

花澄は壁に並ぶ様々なお酒のラベルをまじまじと眺めていた。

このバーはどうやら普通のバーで扱うカクテル類だけではなく、どうやらワインや日本酒も扱っているらしい。

もの珍しそうに酒瓶を眺める花澄の顔を、隣に座った暁生が楽しげに覗き込む。


「花澄さんは、バーにはよく来るのですか?」

「いえ、ほとんど来たことはありません。会社の宴会の二次会で日比谷バーに行った程度で……」


花澄は言いながら、目の前に置かれたハイボールを一口飲んだ。

口の中でウイスキーの香りと炭酸の風味が絶妙に混ざり合い、一口飲んだだけで美味しいと分かる。

ハイボールでこの味を出せるということは、バーテンの腕はかなりのものだろう。


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