「……っ、暁生、さん……」


驚き足を止めた花澄の前に、腕を組んで電信柱に寄りかかっていた暁生が身を起こしてすたすたと歩み寄る。

その仕草に、花澄は思わず息を飲んだ。


────7年前の、秋の夜。

曼珠沙華が夜風に揺れる中、紫檀の柱に寄りかかり、花澄を待っていた環。

花澄が環の脇を通り過ぎようとしたら、突然腕を引かれ、そして……。


「……っ……」


あの時の環をとっさに思い出してしまうのは、なぜなのだろう。

外見が似ているのは言わずもがなだが、どうして仕草までがこんなに似ているのだろう。

背を強張らせた花澄に、暁生はその眼鏡の奥の瞳を細め、唇の端を歪めて笑った。


「……口座は、確認していただけましたか?」

「暁生さん、あれは、やはりあなたが……?」

「あなたには言ってませんでしたが、私のモットーは『やられたらやり返せ』でしてね。意趣返しをさせて頂いたまでですよ」

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