「ふう……」
緊張しつつも大きなドアの前に立ち、ノックをする。
「澤田です」
「どうぞ」
扉の向こうから聞こえてきたのは、間違いなく深青の声で――
よく磨かれたドアノブを引くと同時に、中から出てきた腕に肘のあたりをつかまれて、部屋の中に引きずり込まれる。
「きゃっ……」
抱えていた封筒が床に落ち、そのまま中身が散らばる。
けれどそれを拾い集めることは出来なかった。
「まゆっ……」
息が止まるほど強く抱きしめられて、身動きが取れない。
強く薫るスミレに深青を強烈に感じて、まゆは激しく動揺していた。
深青!?
顔を上げると自分を切なく、熱っぽく見つめる深青と目が合って。
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