だけどないものねだりだ。私はそんなことを考えてはいけないんだから――。
「まゆ」
振り返ると、白いタキシード姿の悠馬が向こうから近づいてくるのが見えた。
いったいどうして?
もうすぐ式が始まるのに。
まゆは不思議に思いつつも、目の前にやってきた悠馬を見つめ返す。
大学を卒業してすぐ海外勤務になった悠馬と会うのは、本当に久しぶりだった。
「僕が送ったワンピースドレス、着てくれてるんだね。とても似合ってるよ」
「ありがとう……靴も履いてるんだよ」
やはり、面と向かって褒められて、顔が熱くなる。
まゆは恥ずかしくなりながら、うつむいた。
悠馬の学生のころとは違う、大人の色気や雰囲気に、どうもうまく話せなかったまゆだったが、こうやって優しく話しかけられると、嬉しくなる。
そもそも、結婚式に出られるとは正直思っていなかったのだが、悠馬がアメリカからまゆのために淡いピンクのドレスと美しいパンプスを送ってくれたので、出席することになったのだ。
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