見つめられていると思うだけで心拍数が上がる。
どうやってこの場を切り抜けたらいいんだろう。
その瞬間、天の助けか、まゆのバッグの中の携帯が震えて存在を主張し始める。
あ……!
どうして私は携帯のことを忘れていたの!
まゆは急いでバッグを開け、中に手を入れ通話ボタンを押す。
「深青!」
その瞬間。悠馬はまゆの携帯をやすやすと奪い、足元に落とすと、ガツンとかかとで踏みにじった。
パキリと乾いた音がした携帯に、さらに半分残っていたペットボトルの水を上からかける。
携帯が駄目になったのは一目瞭然だった。
「な、んで……」
悠馬の暴挙にまゆは息をすることを忘れていたが、彼がペットボトルをテーブルの上に置いて自分に手を伸ばしてきたのに気付いて、また全身が粟立った。
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