社説
「0増5減」成立/一段落では済まされぬ
衆院小選挙区定数の「0増5減」に伴う区割り改定を盛り込んだ改正公職選挙法が24日、衆院本会議で3分の2以上の賛成により再可決、成立した。 参院送付から60日以内の採決が見送られたため憲法59条の「みなし否決」を認定、自民、公明などが再可決で押し切った。 みなし否決を適用した再可決は5年ぶりで、選挙の「土俵」を一院の議決だけで引き直す異例の決着。「党利」を超えられない政治の現状を見せつけた。与野党双方に言い分はあろうが、理にかなう対応であったか問い返してもらいたい。 改正法は最高裁が1票の格差をめぐり2009年衆院選を「違憲状態」と判断したことを踏まえ、1選挙区当たりの人口最大格差を1.998倍に縮減する。福井、山梨、徳島、高知、佐賀の5県の小選挙区定数を各1議席減らし、17都県42選挙区の区割りを見直す。 昨年11月、小選挙区定数を「0増5減」する選挙制度改革関連法が成立したものの、区割りの見直しは間に合わず、12月の衆院選は違憲状態で行われた。 1票の格差訴訟で各地の高裁は「違憲」「違憲状態」と断じ、一部で選挙を無効とした。 司法が突き付けた格差の是正。国会が真っ先に取り組むべき課題であることは論をまたない。にもかかわらず、与野党が歩み寄り、一定の合意にたどり着けないとはどうしたことか。 与党の自公は格差是正の優先を主張した。「0増5減」を緊急避難的措置として是認できても、しょせん一時しのぎにすぎない。改正法の2倍以内は10年国勢調査を基にした格差で、3月の推計人口ベースでは2倍超えの選挙区が相次いでいる。 関連法成立に際し、自民、公明、民主3党は選挙制度の抜本見直しで合意した。自公は経緯を重視し、折り合える案づくりにどれだけ汗をかいたのか。 野党各党も自分たちが有利になる制度にこだわり、議論が交わることはなかった。 関連法に賛成した民主党も抵抗を続けた。解散の条件、選挙制度改革の確約がほごにされることを理由に挙げているが、改正法を容認した上で、抜本改革の実施を迫る胆力、交渉力を示すべきではなかったか。政府が小手先の是正で「食い逃げ」するようなら、目前の参院選で徹底的に批判できただろう。 人口変動に伴い選挙のたびに格差是正で混乱する事態は好ましくない。定数削減の是非、投票に示された民意と各党の獲得議席が大きく異なりがちな小選挙区制の評価などを含め、総合的な検討が避けられない。 4月に衆院を通過、参院に送られた改正法案は不毛な駆け引きで2カ月間、審議にすら入れなかった。むなしい限りだ。 党の利害がぶつかり、容易に妥協が図れないことがはっきりした。国会の手に余る以上、選挙制度審議会の場で有識者らの知恵を借りるしかない。 国会は26日で閉会となるが、抜本的な選挙制度改革の幕を引くわけにはいかない。
2013年06月25日火曜日
|
|