【林亜季】来年で100周年を迎える宝塚歌劇。宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)近くに移り住む女性が増えている。おひざ元の同市栄町1丁目では、女性は男性の1・6倍。多くが歌劇ファンらしい。スターの「入り待ち」「出待ち」に通い、「歌劇仕様」に改装した部屋でゆっくり。「ヅカファン」がたどり着いたあこがれの暮らしとは――。
■毎日「出待ち」
宝塚大劇場から徒歩5分の一軒家に暮らす公務員の岡村英明さん(30)と妻の久美子さん(30)。大阪府箕面市の団地から2011年12月に引っ越して来た。
ともに25歳で結婚。英明さんは大劇場に通い詰める妻を思い、夢のマイホームの地に宝塚を選んだ。
久美子さんは、月組の元トップスター霧矢大夢(ひろむ)さんの大ファン。ファン仲間には、引っ越したことをなかなか言えなかった。「あまりに大劇場に近すぎて気持ち悪がられるかなって」
でも転居してから、霧矢さんの公演や稽古の「入り待ち」「出待ち」を毎日して、声もかけられた。「退団前に精いっぱい思いを伝えることができた」
久美子さんはタカラジェンヌも私服で着る洋服ブランド「ロイスクレヨン」に勤務。きらびやかな衣装や舞台、派手なメークを見ているうちに、非日常的な雰囲気にはまってしまった。「劇場にいる間は、普段とは違う世界にいるような気分を味わえるんです」
通勤では大劇場前の「花のみち」を通り、阪急宝塚駅まで歩く。帰りは、劇場の電気がついているのを見て「遅くまで稽古してる。私も頑張ろう」と思う。
英明さんは夜道が心配だ。出待ちをする久美子さんを少し離れた場所で見守り、終わったら一緒に歩いて帰る。「今が、人生で一番幸せです」。2人は声をそろえる。
■スミレ色の壁紙に改装
大劇場まで徒歩3分の築40年のマンション。兵庫県尼崎市から越して来た女性(45)は3DKの壁を取りはらい、「歌劇仕様」のワンルームに改装した。
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朝日新聞社会部