週末のSNSを眺めていたら中国工商銀行のATMから現金の引き出しが一時的に出来なくなったらしいという情報が飛び交っていました。

えっ、マジ?

何でもシステムのメンテナンスだったそうで、それにしてもATMの操作画面から「現金引き出し」のボタンだけが消えているという情報が正しいのなら……スリリング過ぎですよね。

キプロスかよ、お前。

まあ冗談は兎も角、新華社電では中国人民銀行は週末にも「別に中国のバンキング・システムはクランチを起こしていない。お金は、あるところには、ある」となんだかわけわかんない談話が伝えられていて……アンタ、市場を鎮めようとしているの、それとも「シャドー・バンキング逝っとけ!」とけしかけているのか、どっちヨ。

ふざけてばかりでは読者に申し訳ないので、昨日紹介した『バロンズ』の記事中、資本効率の喪失(loss of capital efficiency)という箇所が僕も気になったので、ちょっと調べておきました。

まず中国における信用の追加のチャート。

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ここで赤の「信託商品」が、例のシャドー・バンキング部分です。

次に同じ期間、名目GDPがどれだけ成長したかのグラフを掲げます。

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なお、普通、GDPを論じる際は実質GDPを使う訳だけど、ここではあぶく的な信用の創造がどれだけ見かけ上のGDPを押し上げているか? を知りたいわけだから、わざと名目を使いました。

すると2007年くらいまでは、大体、平行して伸びている事が確認できます。ところが最近は信用創造が増えても、名目GDPは同じペースでは増えてないのがわかります。これを確認するため、名目GDP成長額÷信用の追加額を計算することで、1人民元信用追加されるごとに幾ら名目GDPが押し上げられたかを計算しました。

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すると0.31押し上げたことがわかりました。

ちょっと粗野なやり方だけど、『バロンズ』が言っていたコトとは、すなわちこれではないかなと……(なおバロンズの場合、押し上げ係数は0.25にまで下がっているとしています。なんとなく、計算がズレてます)




あとここへきて何故、みんなが寄ってたかって中国を糾弾しているのか? について、ちょっと自分でも確認してみたいと思ったので、次のようなグラフを作ってみました。

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これはこの週末にパブリッシュされたばかりのBISのアニュアルレポートに含まれていたデータを加工したものですけど、2007年から2012年にかけて各国の負債が、対GDP比でどれだけ増加したかをしめしたものです。

水色が増えている国が多いですね。これはリーマンショック以降、各国とも政府負債が増えたことを示しています。

ところが中国だけは政府部門ではなく、赤(ノンバンク・コーポレーション=つまり事業会社)が増えている事がわかります。この殆どは一番最初のグラフの信託商品だと思います。

アイルランド、ポルトガル、ギリシャなどは実質的に「逝った国」なので、中国の赤の部分の増加幅が半端ないことがわかります。

もちろん、シャドー・バンキングはそれ相応に物件価格がどんどん上昇していれば、なんら問題ないわけです(笑) なぜなら借金の借り換えに窮すれば、物件を手放せばいいわけですから。ところが……

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上のグラフをみると、確かに不動産価格は上がっているけど、それよか負債の膨張の方が遥かに大きいわけです。(その意味じゃタイなんかも不可解だけどぉ? ねぇ、三菱UFJサン?)