こんな泥仕合を見せられては、与野党に丸ごと不信任を突きつけたくなる。衆院はきのう、小選挙区の「0増5減」に伴う新区割り法を与党の3分の2の賛成で再可決し、成立させた。参[記事全文]
これは居座りどころか、居直りといわれても仕方ない。不祥事が相次ぐ全日本柔道連盟の上村春樹会長が、続投する意向を明らかにした。きのうの臨時理事会で将[記事全文]
こんな泥仕合を見せられては、与野党に丸ごと不信任を突きつけたくなる。
衆院はきのう、小選挙区の「0増5減」に伴う新区割り法を与党の3分の2の賛成で再可決し、成立させた。参院は4月に法案を受け取ったにもかかわらず、60日間審議をせず、否決したものと見なされた。
衆院小選挙区の「一票の格差」が最高裁で「違憲状態」と断じられたのは、一昨年春のことだ。それから総選挙をはさんで2年あまり。国会が出したたったひとつの答えが、この「0増5減」の新しい区割りだ。
私たちは社説で「0増5減」について、投票価値の平等に向けた抜本改正に進むまでの「緊急避難的な措置」と位置づけ、一刻も早い実現を求めてきた。
たとえ最低限の帳尻あわせであっても、「違憲状態」にひとまず区切りをつけないことには、腰を据えた検討作業に進むのは難しいと考えたからだ。
だが、各党には、そんな真摯(しんし)な議論をするつもりは、さらさらなかったようだ。
参院で与野党は、この法案の審議や採決をする、しないでもめ続けた。「0増5減だけでは抜本的な解決にはならない」という野党側の言い分もわかるが、ならば堂々と審議の場で主張すればいい。
議会としてあたりまえの審議をせぬままに、会期末を目前に控えた与野党は、有権者にはまったく理解できない駆け引きを繰り広げた。
民主党の予算委員長が、首相の出席が見込めないまま予算委員会を開くことを決める。与党はこれに対抗するかのように、民主党の参院議長の不信任決議案を提出する。
ともにその狙いは、参院選を控えて相手の非をアピールすることだ。だが、そのあげくに衆院に再可決を許してしまったのでは、参院の自殺行為と言われても仕方ない。
肝心の選挙制度改革については、衆参両院ともに議論を参院選後に先送りだ。
来月の参院選は、昨年の臨時国会で成立した「4増4減」の新しい定数配分で行われる。一票の格差は5倍近くのままで、選挙後に無効を求める訴訟が起こされる見通しだ。
一方、昨年の衆院選をめぐる無効訴訟の最高裁判決は、この秋に見込まれている。
国会はつまるところ、最高裁から「違憲、選挙無効」の最終通告を突きつけられない限り、何もできないのか。
「国権の最高機関」の、あまりにもむなしい姿である。
これは居座りどころか、居直りといわれても仕方ない。
不祥事が相次ぐ全日本柔道連盟の上村春樹会長が、続投する意向を明らかにした。
きのうの臨時理事会で将来の辞意を口にしたが、期限は区切らなかった。「改革改善のめどが立ったら辞める」というあいまいな条件つきである。
女子選手への暴力問題、助成金の不正受給、さらに理事によるセクハラ問題。その発覚のたびに繰り返してきた自己弁護との違いは見あたらない。
いまの執行部体制が刷新されないままでは、改革が本当に進むとはとても信じられない。
臨時理事会は、助成金問題の調査を委ねた第三者委員会からの最終報告を受けて開かれた。
「受給に問題あり」とされた計6055万円を日本スポーツ振興センターに全額返し、2人の外部理事と3人の女性理事を迎えるなど、部分的な改革案が一応示された。
また、年3回の理事会とは別に、毎月開く「常務理事会」の新設も決めた。だが、そのメンバーは、会長ら執行部を中心に11人が務めるという。まるで屋上屋を架すように映る。
上村会長は第三者委の報告を尊重するとしていたが、実際の態度は裏腹だ。不正の認定について、「必要な修正をしてほしい」と報告書の書きかえを促す要望書を会長名などで3回出していたことがわかった。
これを受けて、第三者委が「現場の意向を聞かずに物事を決める上層部の体質は改善していない」と指摘したことについては、「上層部だけでなく、いろいろな意見をまとめたもの」と記者会見で語り、反省の言葉もなかった。
これまでも、暴力の事実を確認しながら、その監督を厳重注意で留任させたほか、助成金の流用も当初は調査にすら乗り出さなかった。現体制に自浄能力があるとは到底思えない。
こうした事態を認識していながら傍観してきた理事会や評議員会の責任も重い。学閥や年功序列がはびこり、いまだに組織として正常なガバナンスが機能しているとはいえない。
日本水泳連盟や日本バレーボール協会では相次いで40代の会長が誕生し、改革の努力をみせたのとは対照的だ。上村会長は会長職を辞めた後も理事として残る可能性まで示している。
世間の常識からかけ離れた全柔連のモラル感覚は、日本の柔道界そのもののイメージを損ねかねない。きょう開かれる評議員会は、全柔連の抜本的な再出発の道筋を話しあうべきだ。