アングル:福島第1原発で進まぬ汚染水対策 、魚を失った漁師の苦悩
[久之浜(福島県) 31日 ロイター] - 福島県久之浜の沖合。ドンという音とともに、漁船「正栄丸」の甲板に多くの魚が水揚げされた。中にはカニや小型のサメも含まれているが、この魚介類は食卓に並ぶことはなく、放射能検査に送られる。
2011年に発生した東日本大震災で東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の原子炉がメルトダウン(炉心溶融)を起こしてから、日本政府はこの海域での商業目的の漁業を禁止している。一方、東電は放射能汚染水が土壌や海に流れ込まないよう対策に追われている。
正栄丸の船長、八百板正平さん(80)の獲った魚がかつて販売されていた市場は、今もがれきと化したままだ。震災の後、久之浜の漁師たちに残された唯一の仕事は、魚の汚染レベルを調べるということだけだった。
「自分たちの魚に誇りを持っていた。ここの魚は全国的にも有名で、私たちはそれなりの暮らしを送っていた。今や残されたのはサンプリング調査の仕事だけだ」と嘆いた。
福島第1原発の原子炉建屋には1日400トンの地下水が流入し、汚染水が増加している。東電は対策として、汚染される前の地下水を1日100トンくみ上げて海に放出する「地下水バイパス計画」を立てたが、地元漁師からは「断固として反対」との声が上がり、折り合いがつかないままだ。
<募る不信感>
東電幹部は30日、バイパス計画について漁業関係者の代表者と話し合いの場を持ち、計画への理解を求めた。また、茂木敏充経済産業相は東電に対し、建屋周囲の土壌を凍結させて「遮水壁」を作り、地下水の流入を食い止めるよう指示した。
東電幹部は汚染水の問題解決には4年程度かかるとの見通しを示しているが、漁業関係者側は、バイパス計画によってさらなる汚染や遅れが発生する可能性があると懸念を表明した。 続く...