主な立候補予定者 4氏招き討論会
主張 どう違う
7月の参院選を前に、京都選挙区(改選数2)に立候補を予定する主な4氏を招いて、朝日新聞京都総局は15日、討論会を開いた。各氏の主張にはどんな違いがあるのか。政治状況や憲法改正、景気回復策などをめぐる議論を紹介する。
※敬称略。写真の並び順はくじ引きで決めました。発言の順番はテーマごとに入れ替わっています。
(1)情勢認識
「既成政党ダメ」人々に期待 山内氏
――昨年の総選挙で民主党は惨敗した。現状をどう認識し、どう戦いますか。
北神圭朗 非常に厳しい。民主党の体質も信頼も改善していない。
政策以前の問題として、党の結束が非常に乱れ、信頼を失ってしまったのが反省点。多様な意見があるのはいいが、党の綱領、基本理念を共有しなければ。
選挙に向けて、党のあり方について訴えているが、有権者にとっては「我々の生活をどうするのか」という問題の方が先。両方言わねばならないのが大変だ。
――自民党は与党に返り咲いた。支持率も高い。
西田昌司 期待感はあると思うが、実際はよくわからない。もともと6年前も安倍総理。当時も「戦後レジームからの脱却」を訴えていた。私もそうだし今回も同じ。民主への落胆から、自民にもう一度やってもらおうという期待で高い支持率になっているが、何も変わっていない。そういう意味で、候補者でありながら実は違和感がある。郵政解散のような熱狂や盛り上がりは今回はない。
――二大政党化が進む過程で、共産は2004年に議席を失いました。
倉林明子 民主党政権は公約をなし崩しにし、自公民で消費増税法案を通すなど、「自民党化」したと感じる。「第三極」と呼ばれる政党も自民党の補完勢力になっている。「自共対決」という構図が明確になった。有権者に選択を問いたい。消費税は選挙の争点として国民の審判を経ていない。社会保障制度の改悪や原発問題、TPP(環太平洋経済連携協定)、憲法問題でも争点を示す。
――橋下徹共同代表の慰安婦発言などで、維新の勢いが落ちている。
山内成介 橋下共同代表の発言直後は、渡したチラシを破って捨てられたり、ぐちゃぐちゃにして投げられたり。だが、ここに来て、街中で話ができるようになった。
発言問題の後に、株価の乱高下が起きた。物価は上がるが、給料は上がらず、自分たちの足元がぐらついていると人々は感じている。既成政党ではダメだと、維新への期待が改めて高くなっていると思う。
(2)憲法改正
最高法規、自分たちで決める 北神氏
――現行憲法をどう評価するか、聞かせて下さい。
西田 米国が「占領基本法」として作った現行憲法は改正すべきだ。憲法9条があるから戦争が起きなかったのではない。冷戦という東西の対立軸が起こさなかっただけだ。冷戦終結後、中国のように領土的野心のある国が出てきた状況にどう対処するのか。
現行憲法の枠の中で考えても意味がない。暴論に聞こえるが、私は「憲法無効論者」。憲法の枠の外に答えがある。政治がやるべきは、現実に目を見開くよう国民に訴えることだ。
96条改正には反対だ。まず現行憲法の何がおかしいのかを国民がしっかりと議論するべきだ。いまや96条改正は党内でもまったく主流ではない。
倉林 憲法が時代にそぐわなくなっているのではなく、憲法や9条が生かされる状況を作っていく必要がある。例えば尖閣問題。政府はそもそも「紛争はない」という立場で、話し合おうともしない。紛争がないと言ってしまえば、交渉のしようもない。米軍と自衛隊が、島の奪還訓練をするなど、ルール違反を力で抑えようとすれば、軍事的緊張が高まる。国際法に準じ、互いに理解しあう努力をするべきだ。
96条改正は、もってのほか。憲法は権力を縛るもので、改正のハードルが高いのは当然。時の権力が憲法を変えやすくするなんて、「裏口入学」みたいなことを考えるべきではない。
山内 米国からの「あてがいぶち」の現行憲法は変えるべきで、96条改正に賛成だ。明治のころは国会議員は偉く、民衆は決められたことに従っていればよい存在だった。いまは国民の方がいろんな知識を持ち、解決策を知っている。衆愚政治の逆で、愚かなのは議員の方だ。総議員の3分の2というハードルを設けるのではなく、国民投票という形で、賢い国民の方に判断を委ねるほうが時代に合致している。
国家の自立のために、私たちが納得して憲法を決めるべきだと思う。仮にいまの憲法と全く同じになっても構わない。9条の改正の是非も、国民の議論に委ねるべきだ。
北神 憲法改正に賛成だ。最高法規である憲法は、自分たちで議論して決めるべきだ。
先日、中国の習近平国家主席と米国のオバマ大統領が会談した。ゆゆしき問題だ。太平洋を挟んで両国がつながりを強化することは、絶対に許してはならない。中国の台頭を米国と組んで抑止するうえで、集団的自衛権が認められていないことが障害だ。日本が撃たれたら米国に守ってもらうのに、米国がやられても「うちは立派な日本国憲法があるので手伝いません」では通らない。
9条も、自衛隊の存在を認めるために無理な解釈を重ねており、法治国家として変な話だ。
(3)アベノミクス
「化けの皮」はがれた 倉林氏
――「アベノミクス」を評価しますか。各人の経済の処方箋(せん)をうかがいます。
倉林 参院選前までは効果が持続するかと思われたが、化けの皮がはがれてきたのではないか。圧倒的な労働者の給与、中小企業の利益の底上げ抜きにデフレ経済は打開しないし、実体経済の成長はない。
そのために大企業の内部留保を一部使う。社員の賃上げに使い、下請けに還元する。すると所得税収も増え、法人税収も上がる。そうなれば財政的な改善も見えてくる。
消費税を上げるのは、円安で中小企業の経営がしんどくなっているところに冷や水を浴びせるようなもの。やるべきでない。
山内 安倍さんのブレーンと維新のブレーンは似通っているので、方向性は自民党と合致しているところが多い。しかし、自民党はスピード感と実行力が衰えているところがある。いい所はいい、悪いところは悪いと自民党にピリッとしてもらうために我々の存在意義がある。
――三本目の矢をきちんと実現していくべきだと。
山内 そう。より速く日本経済を復活させるのが大事だから、実行力を持ってやってほしい。
北神 景気は気から。明るくなったことは評価できる。だが金融・財政政策はやり過ぎだ。日本銀行総裁が「異次元の緩和」と言うまでやる必要があるのか。副作用がある。日本経済を賭場にしてしまい、外国人投資家に安売りしてしまっている。株価変動の大きな要因だ。
物価が下がるのは、景気が悪いから。景気をよくするには公共事業もある程度必要だが、技術立国日本として、企業の研究開発を後押しできる形で、国の財源を使うべきだ。労働力人口が減るなか、働く女性の支援やお年寄りの雇用を受け入れる仕組みづくりも大事だ。
西田 アベノミクスは、私の考えと似て非なる所がある。デフレ脱却のためには財政出動すべきで、財源は国債を発行すればいい。銀行で消化できるが、景気がよくなれば銀行側の資金が不足し、利息が上がる。それを防止するために日銀が市場から国債を買うのが本来の流れだ。今回は順番が逆。先に日銀が国債を200兆円買うと、投機マネーが出てきてしまう。
デフレの一番の原因はグローバル化。先進国は途上国に雇用を奪われて厳しい。グローバルに動くお金を調整しないと。法人税をある程度上げるべきだ。
倉林 賛成。
西田 実効税率を50%ぐらいまで戻す。一方で投資減税を行えば、投資意欲が上がり、国内でお金が使われるようになる。
■指名討論■
集団的自衛権、解釈で可能 西田氏
質問者・山内 北神さんに聞く。民主党内部のごたごたについて聞きたい。
北神 小選挙区制では1人しか候補者を立てられないので政党に権限が集中し、企業に似た構造になる。しかし民主党はそこが理解できず、自分たちの総理が右と言っても自分の信念を貫くんだと。最後にトップが決めたら従わないと統治ができないのに。
質問者・北神 西田さんに。憲法96条改正になぜそんなに反対なのか。要件を議員の2分の1の賛成に下げても、次に国民投票がある。
西田 大日本帝国憲法も3分の2だ。それは政権与党が簡単に変えられないという意味。野党を巻き込んで国の仕組みのおかしいところは変えましょうという意味だ。
やらなければいけないことに9条の改正があるが、集団的自衛権は解釈改憲でできる。(自衛隊にしても)朝鮮戦争を契機にアメリカが持てと言うから、解釈で「陸海空軍」を持った。次は集団的自衛権。それは与党でできる。
質問者・西田 北神さんが先ほど話した米中首脳会談。米国と中国が手を握る。日米安保は大事だが、米国頼みは破綻(はたん)している。自分の国を自分で守らないと。
北神 自分たちで国を守るのは大前提。国のために死ぬという愛国心をどう教育するかが非常に重要だ。ただ、当面は日米同盟を強化せねばならない。
自主防衛は大事だが、あまり政治家が勇ましく、ストレス解消みたいにやるのは危険。なし崩し的に戦争に巻き込まれてしまう。国民も毅然(きぜん)たる外交は望んだが、「そこまでやれとは言っていない」となる。
倉林 (北神氏と西田氏が)割と近い?(笑)
北神 割と近い。(笑)
質問者・倉林 西田さんにTPPについて。政府は参院選後に交渉に参加するが、自身は「百害あって一利なし」と主張されている。
西田 「百害あって一利なし」だ。TPPの本質はグローバリゼーションそのもの。人間と投資が海外に行く。貿易は伸びず、国内総生産(GDP)は伸びない。大メーカーは利益が上がるが、国内の投資が減り、地域の雇用が減る。完全にデフレ促進だ。「国益を守る」と総理が言ったから、私は黙った。
倉林 現時点の事前協議は容認できるのか。
西田 容認できない。交渉参加自体が不本意。ただ、同盟国の米国が「こっちに来てください」と言うのにいきなり「行かない」と言えばかなり角が立つ。入った後で条件が合わなければやめたらいい。交渉を有利に進めるためにも徹底的に言い続ける。
◇にしだ・しょうじ◇
滋賀大卒。税理士。1990年に府議になり、2007年参院選で初当選。54歳。
◇きたがみ・けいろう◇
京大卒。元大蔵省(現財務省)職員。2005年から衆院議員を2期。46歳。
◇くらばやし・あきこ◇
京都市立看護短大卒。元看護師。今月まで京都市議を5期。52歳。
◇やまうち・せいすけ◇
京大卒。元不動産販売管理会社長。元任天堂社員。47歳。
◇ ◆ ◇
4氏の主張
●西田氏
グローバリズム脱退
昨年12月の衆院選で政権交代を成し遂げたが、参議院はまだ少数与党のまま。過半数を取って安倍政権を安定させたい。
今後、一番の政治的争点になるのはグローバリズムに乗るか、脱退するか。私は経済も安全保障も、自分の国にお金の流れを向ける。内需拡大とは安全保障分野を含めた話。グローバリズムからの脱退が国土の防衛や日本の繁栄になる。
私は府議時代から、「伝えよう、美しい精神と自然」と訴えてきた。今になって、「日本を、取り戻す」という安倍内閣の訴えと重なってきた。
●北神氏
労働力人口増強へ策
参議院は初挑戦だが、衆院議員を2期7年務めた。舞鶴の港や京都縦貫道など京都のいろいろな課題に、経験を生かせる。財務省勤務や経済産業政務官も経験している。アベノミクスはほどほどにして、中小企業対策や研究開発、労働力人口の増強など地道な政策を打ち出していく。
伝記教育を学校に導入したい。歴史上の人物だけでなく、現代のイチロー選手などの生き様を子どもたちに伝える。あこがれる気持ちが子どもにわき、生きる力につながる。「こんな日本人がいるのか」と自然な愛国心も育まれる。
●倉林氏
弱い者いじめを阻止
府議、京都市議と19年、地方議員をしてきた。政治信条として大事にしてきたのは「弱い者いじめはあかん」。福島・会津出身ということもひっくるめて人間倉林明子を知ってもらい、信頼してもらいたい。
自民党の進めようとしている政策に対して対決軸を明確に示していく。消費税の増税中止、社会保障制度の改悪阻止、経済政策では内需拡大や賃上げを訴えたい。原発は再稼働を許すのか、推進でいいのか有権者に問いかけ、ただちにゼロにする明確なメッセージを出したい。TPP参加は断固反対する。
●山内氏
京都が観光産業先導
一番訴えたいのは地方の自立だ。中央で全てを決めて、地方が従う時代ではなくなっている。
地方各地が活性化することで、日本全体を再生させると考えている。
京都の場合は観光産業だろう。海外から、今までの2倍、3倍、10倍の人を呼び込めるようにできれば、経済を潤すことになる。
京都を訪れた人は東京、大阪、東北と全国を巡り、お金を落としていく。
京都が先導して観光産業を振興することが、日本経済を再生させるキーワードにもなる。そのことを重点的に訴えたい。
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