バカは伝染する
目の前に立ちはだかる巨大な岩。
いや、竜。
後ろにいる兄達はもう戦意をなくしている。
私も戦意を削がれかけたが、父さんのおかげで最後の一歩を踏みとどめた。
山など割ったことのない私を、父さんはさも見てきたかのように話す。
ずっと冷めた目で見ていたが、いつしかそのバカさが私にも伝染していたようだ。
私は【山割】。
こいつを割って、正式に山割を名乗ろう!!
恐怖を止めるには、この異名にすがるしかない。
徐々に迫ってくる岩竜。
私は、優しく剣を上段に構え、集中する。
呼吸を整え、待つ。
岩竜の青く光る目をもつ顔が、私の間合いに入った瞬間、
私はいつもの素振りをしてみせた。
剣は岩竜の額をフワリと切り裂き、斬撃が体にもおよぶ。
岩竜は真っ二つとなった。
50mもある胴体は、今二つに分かれ横たわっている。
「や、やった」
恐怖から解放された私の体から一気に汗が吹き出る。
一気に疲れも押し寄せ、剣を握る力も失われる。
私はやったのだ。
山のような竜を斬ってのけた。
これで私は山割だ。正真正銘の山割だ。
「山割、山割、山割だ!!」
「おい、大丈夫か?」
興奮しきった私に、フイ兄さんが声をかけた。
あまりの興奮に我を忘れてしまっていたようだ。
「大丈夫です」
「ライとガリクが目を取り次第、ここから出よう」
「はい」
帰りはライ兄さんに背負ってもらった。
渾身の一撃と初めて生物を斬った衝撃が私の体の震えを止まらせない。
それでもいい。
とりあえず、生きて帰れる。
これからは本当に王族ライフが待ち受けている。
あの大臣ももう文句は言えないだろう。
洞窟を抜けると、外は昼真っ盛りの天気だった。
急な眩しい光に、4人とも目を開けることができない。
「おーい」
徐々に慣れてきた目を見開くと、今朝と変わらぬ場所に御者がいる。
「無事だったんですね。
よかった、よかった」
「ああ、帰ったらパーティーだ」
フイ兄さんが嬉しそうに言う。
帰りは気軽だった。
行きとは違い、皆陽気だ。
あのひどい会話もない。
ストレスなく城に着けそうだ。
私は帰り道の馬車で、目の保存された容器に何度も目を通す。
戦っていたときは恐怖で曇っていたが、改めて見ると、やはり美しい。
売るのは少しもったいない気もする。
「いたっ」
狭い馬車の中でライ兄さんが踊り、肘が私にぶつかった。
「すまん、すまん」
ダンジョンで絶望していた人とは思えない明るさだ。
帰りは、行きとは違うストレスがありそうだ。
結局、あれからかなりのストレスを受け、
翌日ようやく城に着いた。
ようやく城だ。
私は嬉しくて、馬車を飛び出した。
しかし、不思議なことに城ではすでにパーティーが開催されていた。
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