ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  ケルト 作者:天馬 龍星
ティアナのアポロニウスについては伝説が多い。

 彼の名を冠した魔術書として「ヌクテメロン」とか「自然の秘密について」等があるが、いずれもずっと後世の作品である。

 彼に関する史料としては、フィロストラスによる「アポロニウスの生涯」しかない。

 これはアポロニウスの弟子のダミスの口述に従って、フィロストラスによって書かれたものだという。
 なお、このフィロストラスは170年頃~245年の人物で、アポロニウスだけではなくソフィストの哲学者たちの伝記作者としても知られている。

 また、このフィロストラスの書にしてみても、荒唐無稽な記述が多いが、エリファス・レヴィによると、こうした記述は秘儀を含んだ「寓話」であって、シンボリスムを知る人間にのみ理解できる知恵を含んだ「異教の福音書」であるという。

 例えば、「一角獣の角で作った杯で飲み物を飲めば、あらゆる毒を無効化する」という記述は、一角獣の一本しかない角は、位階の単一性を象徴し、それは秘教的な意味での「王」を意味しているという。

 また、賢者たちの住む宮殿に人を寄せ付けない三匹のドラゴンの描写もある。

 それは沼に棲むドラゴン、平原に棲むドラゴン、山に棲むドラゴンである。

 これは錬金術の「大作業」を象徴しているという。

 すなわち、液体の沼のドラゴンは水銀、山のドラゴンは硫黄、平原のそれは塩を象徴するという。

 彼の生没年は、はっきりとは分からない。

 ただ、キリストと同時代人であった。

 そして、キリスト教がローマ帝国に蔓延していたころ、異教徒たちがキリストに対抗する聖人として、彼を持ち上げていたらしい。


 彼に関する多くの寓話的なエピソードが、キリストの伝説の形成よろしく行われていたらしい。

 すなわち、ローマでパトロンとなった貴族の娘を生き返らせたの、弟子のコリントのメニブスなる青年が吸血鬼ラミアにたぶらかされ、結婚しようとしていた。

 そのまま行けば、彼は食い殺されていたところだったが、アポロニウスはあっさりと吸血鬼の正体を見破り、幻術を破って彼を救出した。

 というような話しである。

 ともかくも、彼は小アジアの『ティアナ』で生まれたといわれる。

 そして、ピタゴラス学派の学園に入り、そこで学んだ。

 その後、学問のための放浪の旅に出たという。

 アテナイやエフェソスやコリントスを周り、そこに滞在した。

 一説によるとインドにまで旅し、インド哲学を学んだと考える者もいる。

 ともあれ、彼は各地を旅しながら、魔術の力によって預言や病人の治癒、疫病の警告といった奇跡をして回ったという。

 彼の思想は、ピタゴラスにプラトンやデモクリトスの思想を魔術的に結合させようとする一種の新ピタゴラス主義の一派であり、そうした神聖な啓蒙をバックグラウンドに、民間の間で行われていた呪術をも、より高位な教義に高め昇華させることにあったらしい。

 彼の死もまた、はっきりとはしない。

 おそらくエフェソスで97年頃に没したらしい。

 彼の死の模様については、弟子たちは、はっきりしたことを伝えてはいない。

 伝説によると、その頃彼は既に100歳を越えており、生きたまま天に昇ったという。

 あるいは、こんな伝説もある。
 ローマ帝国から迫害を受け、彼は逮捕に来た兵士たちに取り囲まれた。
 彼は言った。
「君達は私の肉体を捕らえても、魂までは捕らえることはできない。」
 しかし、彼はちょっと考えて言った。
「いや、君たちは私の肉体すら捕らえることはできない。」
 そして、彼の姿は煙のようにかき消えたという。

 ともあれ、彼は後世の人間に多くのインスピレーションを与え、
 文豪のゲーテやかのブルワー・リットンらの作品に描かれた。
 また、エリファス・レヴィの降霊実験でも呼び出されたという話しも有名であろう。


「魔術の歴史」 エリファス・レヴィ著 鈴木啓司訳 人文書院
「魔法 その歴史と正体」 K・セリグマン著 平田寛訳 人文書院
「世界神秘学事典」 荒俣宏編 平河出版社


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。