知事選2013:検証/上 自慢の組織が空回り 自民、対抗馬ありきの県連 /静岡

毎日新聞 2013年06月18日 地方版

 「想像をはるかに超える得票差。党組織のあり方も考えなくては」。17日に開かれた記者会見で、新人の広瀬一郎氏(57)を擁立した自民県連の中沢公彦政調会長は厳しい表情で総括した。安倍晋三内閣の高支持率を生かし切れず、「自民・民主対決」の構図を巧みにかわし続けた現職、川勝平太氏(64)にトリプルスコアの差を付けられたからだ。

 浜松市の静岡文化芸術大学学長を務め、西部地域に豊富な人脈を持つ川勝氏。一方で東部は広瀬氏の出身地でもあり、県連幹部は「かなり肉薄できる」と予想していた。

 しかし、結果は全市町で川勝氏に敗れ、最も得票率が高い御前崎市でも広瀬氏は34%で、川勝氏の63%に程遠い。2009年知事選で川勝氏の対抗馬だった坂本由紀子氏は同市で52%、伊豆地域では5割強から6割の票を獲得していたが、広瀬氏は2〜3割にとどまり、「県内の自民票の相当部分が川勝氏に流れた」との見方は強い。

 敗北は現職の厚い壁の他に、地域や職域に根を張ったはずの組織が空回りしたのも一因だ。「川勝氏のマニフェスト達成度は赤点」と対抗馬ありきで知事選に臨む県連に、普段は自民支持の県内経済界有力者らも「失政がないのに、代える必要はない」と反発した。

 「国政と知事、知事と県議会のねじれを解消する」。選挙戦中、広瀬氏は盛んに自民系知事の誕生を訴え、塩谷立・県連会長も「一枚岩で戦えた」と振り返る。しかし、政治経験が乏しく、街頭演説などでも「スポーツマンシップ教育」など独自の政策を掲げる広瀬氏に対し、「主張が分かりにくい」との声が組織内でも続出。県連幹部は「もっと生活に密着したテーマを話さないと」と焦りを募らせていた。結局、3候補で立候補に最も早く名乗りを上げながら、自民支持層の票掘り起こしには結びつかなかった。

 党本部から三役、閣僚らの応援を受けての敗北だが、中沢政調会長は「参院選や議会運営も控え、内部的な人事で停滞することがあってはならない」として幹部交代はないと明言した。7月の参院選では自民優勢が指摘されているものの、県議会最大会派を抱える自民として、今後4年間、再選知事とどう向き合うかが試されている。【平塚雄太】

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