検証(2) 衝撃の大敗

(2013/6/19 9:15)
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応援演説に訪れた自民党の石破茂幹事長(左)に謝意を示す自民県連関係者=11日夜、浜松市浜北区

 「もう少し時間があればなあ」。知事選投票日5日前の11日。自民党の石破茂幹事長は浜松市内のラーメン店で、ギョーザに箸をのばしながらつぶやいた。同市浜北区で開かれた広瀬一郎氏(57)=自民支持=の決起大会で応援演説をした後、県連役員らと夕食を共にしながら最終盤の戦略などを協議していた時のことだ。

 知事選の得票数は現職の川勝平太氏(64)の約108万票に対し、広瀬氏は約35万票。「われわれが支援する知事選候補者としては前代未聞」と衝撃が走った自民県連。敗戦が決まった後、県連会長の塩谷立氏(衆院静岡8区)と広瀬氏も「時間が足りなかった」と口をそろえた。

 ただ、「時間」だけで片付けられない敗戦の予兆は、告示前から随所に見られた。

 4月上旬に出馬を表明した広瀬氏。直後から講演や演説を精力的にこなした。サッカーW杯の招致活動など国際的ビジネスに携わってきた経験から、カタカナや英語を交えた話ぶりが目立った。支援者からすぐに「話が難解で、有権者に伝わりにくい」との指摘が寄せられた。

 話し方や演説内容の修正を再三、求められた広瀬氏。指導役の県連幹部らを「小じゅうとのようだ」と愚痴もこぼした。演説スタイルを変えていったものの、県連内には「自民流には染まりきらなかった」との見方が多い。

 県連のドタバタもあった。告示前の焦点は、党本部が勝敗に責任を負う重点選挙として広瀬氏に推薦を出すかどうかだった。県連の推薦要請に対し石破幹事長は「本人と会ったこともない」と不機嫌に。後日、慌てて幹部が広瀬氏を連れて石破氏を訪ねた。

 告示前に行われた党独自の複数回の世論調査では、川勝氏と広瀬氏の支持率は投票結果と同様の「約3倍の差」だった。その差は広瀬氏が動き始めても縮まらない。党推薦は見送られ、機関決定の必要のない支持に。県議会では川勝知事への対決姿勢を貫き、必死に広瀬氏を支えていた自民県議の1人は天を仰いだ。「影響が大きすぎる。中央が地方の結束を乱した」

 候補者の広瀬氏、党県連、そして党本部。それぞれ事情を抱えながらの選挙戦に、関係者は「勝てるはずがないと思いながら戦っていた」と打ち明ける。

 一方、迫る参院選に県連から悲観論は聞こえてこない。中沢公彦政調会長は「(川勝氏に流れた自民票は)参院選では自民に戻る」と強気だ。国会議員の1人は「大敗は逆バネになる」と期待し、川勝氏を支援した経済人らが参院選では自民候補支持を鮮明にするとみている。

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