◆川勝さん「実績に評価」
再選を喜ぶ支持者らと握手を交わす川勝平太さん=16日午後8時10分、静岡市葵区黒金町で
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静岡県の有権者は「川勝流」の継続を選んだ。首長選で最も強いとされる二期目の選挙。川勝平太さん(64)は次点にトリプルスコアの圧勝に「実績が評価された」と高ぶりをあらわにした。ただ自民党県連が立てた新人広瀬一郎さん(57)、共産党新人の島津幸広さん(56)との政策論争は不完全燃焼で、投票率は低迷。再稼働をめぐる住民投票の是非が注目された浜岡原発の周辺地域では、知事への期待と不安が交錯した。
投票終了直後の午後八時、「川勝さん当選確実」の一報が流れると、静岡市葵区のホテルの宴会場は歓喜に沸いた。川勝さんは妻の貴美さん(65)とともに、「ヘイタ」コールと拍手の中、おそろいの紺色のシャツを着て登場した。
支援した経済界を代表し、はごろもフーズの後藤康雄会長が「女性のパワーに圧倒された選挙戦だった。内陸フロンティア構想や防災減災などやりかけの課題をやりきって、素晴らしい静岡県にしてほしい」と祝福した。
マイクを握った川勝さんは感無量の様子で数秒間沈黙した後、他の二候補をたたえながら「二人が訴えた浜岡原発の廃炉やスポーツマンシップをしっかり受け止めていく」と述べた。続けて「健康寿命日本一の静岡県として、医療福祉を充実させていきたい。また子育て、教育には力を注いでいく。富士山を中心としたふじのくにづくりを国民運動にしていく」と二期目の抱負を語った。一方で、記者団の取材に「政策論争がなかった」と選挙戦を反省した。
川勝さんの強い足場だった県西部。浜松市中区の事務所では、スズキの鈴木修会長兼社長や鈴木康友市長、浜松商工会議所の御室健一郎会頭ら約百人が詰め掛けた。鈴木会長は「選挙は政策でなく感情の対立だった。党派でなく県民のための県政との川勝さんの訴えに、県民の皆さんがしっかりと応えてくれた」と喜んだ。
二期目の県政には「防災や原発など課題はたくさんある。県議会とは『同じ県政を担うファミリー』との思いで、じっくりと丁寧に議論を進めてほしい」と要望した。
◆広瀬さん「やり切った」
敗戦のあいさつを終え、事務所を去る広瀬一郎さん(左から2人目)=16日午後8時25分、静岡市駿河区八幡で
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広瀬一郎さんは午後八時十分、さばさばした表情で静岡市駿河区の事務所に姿を見せた。支援を受けた自民党の国会議員や県議ら約三十人を前に「負けは負け。言い訳するつもりはないが、選挙は素人だから、敗因は分析できない」と頭を下げた。
出馬表明は四月に入ってから。「時間が足りなかった。それは分かった上での立候補だったが、そのせいにはしたくはない」。県内各地を駆け巡った選挙戦を「できる範囲のことをすべてやり切った」と振り返り、今後については「分からない」と述べた。
再選した川勝さんには「静岡には潜在力がある。日本を動かす中核となる県にしてほしい」とエールを送った。
党県連会長の塩谷立衆院議員は「現職に挑むのは厳しかった。残念だが、もう少し時間がほしかった」と険しい表情。本紙の世論調査が示すように、自民党支持層の票を固められなかった。塩谷会長は「国政と地方は違う結果になった。しっかり分析し、七月の参院選に生かしたい」と話した。
◆島津さん「力不足」
支持者を前に敗戦の弁を語る島津幸広さん=16日午後9時3分、静岡市葵区巴町で
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島津幸広さんは静岡市葵区の事務所で午後九時から会見。「十七日間の選挙戦で思いを届けることができなかった。力不足をおわびしたい」と頭を下げた。
選挙戦では浜岡原発の廃炉を強く訴えた。「原発問題が争点になり、若い母親など、これまでの選挙とは違う層からも声援を受けた」と手応えを強調。晴れ晴れとした表情も浮かべ「再稼働をやめるのが県民の多くの願いだと実感した。二期目に入る川勝さんに受け止めてほしい」と語った。
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