東日本大震災:高田松原、現状保存を 「守る会」、県に要望書 実現ハードル高く /岩手
毎日新聞 2013年06月21日 地方版
陸前高田市の「奇跡の一本松」などの保存活動を続けてきた市民団体「高田松原を守る会」は20日、東日本大震災で壊滅状態になった現地を現状のまま保存するよう求める要望書を県に提出した。震災遺構として津波の悲劇を後世に伝える役割を期待しているが、県は現地で防潮堤の建設を計画しており、実現へのハードルは高い。
震災前、高田松原には約7万本の松があり、1940年に国の名勝、64年には陸中海岸国立公園に指定された。防風、防砂の役割を果たしてきたが、一昨年の津波にのまれ、松1本を残して全て倒れた。
松原は約2キロの長さがあったが、現在は砂浜となっている跡地は地盤沈下や津波の浸食で約500メートルに縮小。守る会はその約2ヘクタールの砂浜に残った倒木やむき出しの根を、そのまま保存することを求めている。
一方、県は既に、周辺で二重の防潮堤の建設に着手。計画では、高さ12・5メートルの堤防ができ、砂浜の半分を覆うという。要望書を受け取った県河川課の八重樫弘明総括課長は「市や市民と協議を重ねたい。ただ、街作りの土台となる防潮堤の建設を見直すのは容易ではない。復興も遅れる」と懸念する。
守る会は陸前高田市にも17日に要望書を提出。三陸海岸は5月、「三陸復興国立公園」に変更になったことから、国にも同じ要望をするという。鈴木善久会長(68)は「砂浜は津波の恐怖を伝える物証だ。砂浜には思い入れがあり、そのまま残したい」と語る。【浅野孝仁】