山口県光市で１９９９年に起きた母子殺害事件で、昨年３月に死刑が確定した元少年（３２）＝事件当時１８歳、再審請求中＝が自分の実名を載せた本の著者と出版元に対し、出版差し止めや１３００万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が３０日、広島高裁であった。宇田川基裁判長は６６万円を支払うよう出版元側に命じた１審・広島地裁の判決を取り消し、賠償請求を棄却、出版差し止め請求も１審同様、退けた。

　訴状によると、本は２００９年１０月に出版。タイトルや本文に元少年の実名が入り、中学校の卒業アルバムから顔写真も転載された。

　１審では、顔写真や著者宛ての手紙の掲載について「（元少年は）明確な承諾をしていない」と認定し、本が元少年の肖像権やプライバシー権を侵害したと判断した。出版差し止めについては▽出版当時、元少年は成人だった▽その後死刑が確定した▽犯行の社会的影響が大きい−−などを理由に「重大な損失を受ける恐れは認められない」として請求を退けた。【黄在龍】