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三重の病院〈12〉 県立こころの医療センター 津市城山

(2010年4月4日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する

触れ合いで回復導く

画像ミーティングで患者の治療法を話し合うスタッフ=県立こころの医療センターで

 窓が大きくモダンな雰囲気の病棟は大学のキャンパスを思わせる。日当たりの良い中庭では、治療やリハビリの合間を見つけた患者たちが散歩や会話を楽しむ。

 統合失調症やアルコール依存症、認知症の患者が薬など旧来の方法だけでなく、作業療法や患者同士が積極的に交流するデイケアといった先進的な治療を受ける。「昔の精神科の病棟は閉ざされたイメージがあった」と原田雅典院長(60)。「患者は人や地域と触れ合うことで、回復のきっかけをいち早くつかむのです」と開放的な環境の効果を説明する。

 精神科では長期入院も珍しくないが、3カ月以内の短期間で集中して治療する「急性期治療病棟」も備え、患者は全国平均の半分以下の120日ほどで退院している。

 県内の公立病院で唯一の精神科単科病院として1950(昭和25)年、前身の県立高茶屋病院が開院。85年からは児童部門の県立小児診療あすなろ学園が分離した。99年に現在の施設に建て替えられ、名称も親しみやすい「こころの医療センター」に変わった。

 近年、心の病への理解が進むにつれ、患者数が増加。原田院長は「症状の種類や患者の年齢層が多様化しており、きめ細かやかに対応することが求められている」と語る。民間病院などにかかる患者に、診療全般のアドバイスをするセカンドオピニオン外来や、精神疾患が増えている中学生などの若年層を対象としたユースアシストクリニック(YAC)を開設したのも対応策の1つだ。

 基幹病院として救急医療の拠点も担う。精神科医療で救急患者の搬送はイメージしづらいが、アルコール依存症や認知症の発作、自殺志願者などで需要は大きい。2008年にはスーパー救急病棟の認証を取得し、24時間体制で対応している。

 人材育成にも積極的で、医師と看護師だけでなく、効果的な治療に欠かせない作業療法士や臨床心理士の育成にも力を注いでいる。院内の勉強会だけでなく、ほかの福祉施設や自治体のスタッフを集め、最新医療の情報交換をする「地域連携ミーティング」を開くなどして地域医療をリードしている。 (鈴木龍司)

救急医療を強化

 原田雅典院長の話 体制に余裕があるとは言えないが、精神科の中核病院として救急医療を強化する。最近は入院期間が短縮したことに伴って、外来患者の比重が増している。専門外来などを強化し、多様な患者のニーズに的確に対応していく。ほかの病院や福祉施設などとも連携し、患者が地域社会に基盤を持ちながら治療を受けられる環境を整えたい。

 県立こころの医療センター ▽創設 1950年▽精神科400床▽看護体制 15対1▽常勤医15人、非常勤医6人▽精神科、神経科、入院患者専用の内科、歯科▽津市城山1。近鉄、JR津駅から「警察学校前行き」バス25分、近鉄久居駅からタクシー10分、JR高茶屋駅から徒歩15分▽電059(235)2125

画像県立こころの医療センター 

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