需要が安定したため、国債の価格は安定しており、国債の流通利回り=長期金利には下押し圧力がかかり易かった。そうした国債市場の事情が、わが国が多額の借金を抱えているにもかかわらず、主要先進国の中で最も長期金利水準の低い国になっていた主な理由だ。
インフレターゲットの影響
一方、理論的に考えると、金利水準は、基本的に、実質ベースの金利+期待インフレ率に連動して決まる。そのため、インフレ懸念が高まってくると、長期金利が上がり始めるのは当然の現象と言える。
黒田日銀総裁は4月の会合で、今後2年程度の期間で、デフレから脱却して年率2%程度のインフレにすることを目標に設定した。本当にインフレになるのであれば、長期金利の上昇は抑えられないはずだ。
2%のインフレが実現するのであれば、少なくとも、長期金利が0.80%台ということは考えにくい。長期金利の上昇は仕方がないとしても、問題はそのペースだ。今後、日銀が注力するべきは、長期金利の上昇速度を抑えることだ。それさえ出来れば、実体経済に大きなマイナスは及ばないだろう。逆に、それができないと、経済に悪影響を及ぼすことになるだろう。
1953年神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行入行。ロンドン大大学院修了。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向、みずほ総研主席 研究員などを経て、05年信州大学経済学部教授。07年行動経済学会常任理事、10年FP協会評議委員などを務める。 主要著書等:「日本がギリシャになる日」(ビジネス社)、「行動経済学入門」(ダイヤモンド社)、「実戦 行動ファイナンス入門」(アスキー新書)、「下流にならない生き方」(講談社)、「ファイナンス理論の新展開」(共著、日本評論社)、「行動ファイナンスの実践」(監訳、ダイヤモンド社)、「国債と金利をめぐる300年史-英国・米国・日本の国債管理政策」(東洋経済新報社) 、「はじめての金融工学」(講談社現代新書)、「日本テクニカル分析大全」(共著、日本経済新聞社)、「リスクマネーチェンジ」(共著、東洋経済新報社)、「最強のファイナンス理論-心理学が解くマーケットの謎」(講談社)、「行動ファイナンス」(監訳、ダイヤモンド社)
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