先週金曜日のこと。





金曜日で次の土曜日が休みだというのに、家で晩飯を食べたあとリビングのソファーでテレビを見ていたら、いつのまにか僕は寝てしまっていた。

聞きなれた携帯の着信音で目が覚める。時間は深夜2時をまわっていた。

寝ぼけ眼で携帯の画面を見ると、なんとあの子からの着信だった。

サンドイッチメールから結局メールは返ってこなかったのだが、何度かあの子と電話はしていたのである。

でも、あの子からの着信ははじめてだった。

る「もしもし?」

あの子「なに寝とったん?金曜日やに!今飲み会終わったんやけど四日市おらんかなぁと思って。遊ぼよー!」

る「10分まってください。」





多分今までの人生で、最も早く自宅から四日市に移動したと思う。

道中車の中で、前回デートしたときのことを思い出していた。

前回は思わぬところで下心を露呈してしまったせいか、デートは失敗(ノーセックス)に終わった。

今日の目標は、自然に、かつロマンティックにラブホテルへ連れ込むことである。





指定されたコンビニに到着すると、外に立っていたあの子が僕のほうに近づいてきた。

相変わらずとてもいい匂いがするあの子は、お酒を飲んで少し頬を赤らめていた。

る「ごめん待たせてまったな。どこ行こか?」

あの子「全然ええよーきてくれてありがとう!何でもええよ。」

る「じゃあ垂坂で夜景見よか。」

あの子「垂坂めっちゃ久しぶりー!いこいこ!」

女の子は夜景が好き。

高校生の頃お姉ちゃんに教えてもらった情報に間違いはなかった。





深夜の道はすいていて、すぐ垂坂に到着した。

僕とあの子は車を降りて、垂坂公園の頂上に向かって歩き始める。

夜の垂坂公園は、夜景を綺麗に見るためかかなり暗くなっていた。

あの子もここに来たことがあるはずやけど、暗いのが怖いのか僕の袖を掴んできた。

僕はあの子に蜘蛛の巣が当たらないよう、あいてるほうの腕を左右に振りながら歩いた。





頂上へつくと、天気もよかったおかげでとても綺麗な星空、綺麗な町並みが広がっていた。

しばし無言で夜景を眺める二人。

暫くしてから、今ここから見えている建物が何なのかあの子と一緒に予想し始めた。

あれは長島スパーランドやろ?あれはコンビナートやんなぁ。

色々な場所の予想をした後、僕はあの子にこう問いかけた。

る「あの赤く光っとる建物てチャペルクリスマスぽくない?」

あの子「えーそう?なんか近すぎとちゃう?」

会話にチャペルクリスマスという単語を導入しても雰囲気が悪くなることはなく、むしろ二人の距離は縮まったように感じた。

暫く夜景を見たあと、満足した様子のあの子と一緒に、駐車場に向かって歩き始める。

あの子は上りのとき袖を掴んできたけど、下りのときは腕を組んで歩いた。





駐車場まで戻り、僕は四日市へ向けて車を発進させる。

あの子がお腹がすいたと言うので、深夜でも営業している四日市ブラウンビルの丸一といううどん屋へ向かった。

僕はこの店に到着し、味噌煮込みうどんと生ビールを注文しようとしたのだが、あの子に車やで飲んだらあかんよと止められた。

飲んでまったで運転できませんホテルで酔い覚まそう作戦失敗の瞬間である。

最初の仕掛けをさくっと失敗した僕であったが、こんなところで諦める訳にはいかない。

僕は当然のようにうどん屋を奢り、あの赤い光がチャペルクリスマスやったんか確認しに行こうと提案した。





店をでて、チャペルクリスマスに向けて歩き始める二人。

二人の間に少し変な空気が流れ始めているように感じるが、問題ない、今日のるくぷるは絶好調だと自分に言い聞かせた。

ホテルに到着し、僕はあの子にこう言った。

る「やっぱあの赤く見えとったんココやったんちゃうかなぁ!」

あの子「そうやね。」










後の沈黙である。










ホテルを前にして、僕は何も喋れなくなり、あの子が呆れかえっていることは疑いようのない事実だった。

しかし、僕は知っている。

何度断られてもひたすら適当な理由をつけてホテルへ誘い、もうええわめんどくさいでセックスしよと思わせるスタイルで東京を荒らしていた漢の存在を。

諦めたらあかん!必死に言葉をつむぎだするくぷる。

る「遊び疲れたで寝てこよーなんもせえへんでさ!」

あの子「カラオケやったら寝れるし私歌いたいでJOYJOYいこ。」

る「カラオケか・・・ベッドで寝たいし歯磨きしたいもん。」

あの子「満喫やったらフラットシートやし歯磨きセットあるよ。」

あまりにも断り方が堂に入っている。僕はあの子が既にこのパターンで誘われたことがあることを確信した。

過去にあの子を抱こうとした人と同じ誘い方をしてしまったと感じたとき、僕は恥ずかしさのあまり思考停止状態に陥った。





ええい!ままよ!と思った僕は、ストレートに自分の思いを伝えた。

る「ほんとごめん!お願いやでセックスさせてください!ホテル代払いますから!」

あの子「まじで無理。」

即答だった。





前回の無理発言よりもかなり強めに放たれたその言葉は、僕の戦意を喪失させるに十分な効力を発揮した。

る「ですよね~ナマ言ってすいませんでした。」

僕はあの子を家まで送った。帰りの車内はほぼ無言だった。

僕は運転中何も考えることが出来ず、気がついたら自宅へ到着していた。










自分の部屋へ着くころ、既に外は明るくなっていた。

全然寝れそうになかった僕は、ダメもとであの子に電話をしてみると、なんとあの子は電話に出てくれた。

寝れやんでちょっとだけ話そう。そう伝えながら、僕はそっとズボンをおろした。

今日あったことや、他愛のない話しをしながらチンコをシゴく。

あの子の優しさが逆に辛く感じるのに、刺激を与えられたチンコは勃起していった。

そして、僕はあの子にオナニーしていることを伝えることなく、静かに、静かに射精した。

射精した僕から発せられる言葉はなく、あの子のおやすみなさいで最後の電話は終わりを告げる。

そのとき、僕はまだ、ティッシュで溢れかえる精子と涙を拭っていた。