役員との集団面接を終え、僕は無事SODの内定を手に入れた。

その後、人事と内定後の面談を行うため、再び新中野の本社ビルへ赴いた。





人事「るくぷるくん、おはよう!」

大きな声で挨拶をしてくれる。

採用活動に参加している頃からずっとそうだった。

人事「本来、今日は僕とるくぷるくんだけで面談を行う予定だったんだけど、役員さんがどうしてもと言うので、役員さんも面談に参加してもらうことになりました。」

役員「るくぷるくん、よろしくな!」

る「はい、よろしくお願いします!」

面談にきてくれた役員は、最終面接にいた人だった。

人事、役員、僕の3人で面談ははじまった。





面談の内容は、僕が希望しているシステム部の詳しい仕事内容や、勤務体系、福利厚生などの話しだった。

面談を続けていくと、役員さんはシステム部をまとめている方だと教えてくれた。

役員「これまで話した通り、来期のシステム部の仕事は大きく分けて2つ。物流管理システムの開発と、HP大幅リニューアルなんだけど、君がもしSODに入ってくれるなら、どっちか好きなほうを選ばせてあげるよ。俺こんな待遇今までしたことないよ。」

役員さんは、笑いながらこんなことを話してくれたあと、僕に質問をしてきた。

役員「君は他にどんな会社を受けているの?」

この質問は・・・嫌な記憶が頭をよぎった。

る「基本的にはIT系の会社を受けています。今一番選考が進んでいるのは、ソフトバンクの子会社です。」

役員「そうなんだ。いや実はね、俺前はソフトバンクにいたんだ。そういう大きな会社で働くのもいいけど、ウチみたいな会社でガムシャラに頑張るのもいいもんだよ。若いうちはパワーが溢れているし、君ならやれるよ。」

そういうと、役員は人事に、アレ持ってきてあの箱のやつ、と伝えた。

人事が持ってきた箱の中には、TENGAの繰り返し洗って使える最高級品であるフリップホールや、フリップホール専用ローション3本セットなど、1万円相当のアダルトグッズが入っていた。

役員「これ本当はプロレスラーにあげる予定だったけど君にあげるよ。」

る「こんなに高級なもの頂けません・・・。」

しっかりと販売されている料金を覚えていた僕は、箱の中身を見てたじろいだが、役員さんのおしに負けてアダルトグッズを持って帰った。

すごくでかい箱だったのでカバンに入らず、SODのでかい袋をもらって持ち帰った。

もちろん電車の中ででかいSODの袋を持ち歩くわけには行かず、袋をしまい箱をそのまま持って歩いた。

僕は、SODが強く僕を求めてくれていることを感じた。





それからまた数日後、今度は内定者を全員集めた懇親会があった。

懇親会の最初に、一人ずつ簡単な自己紹介をしていった。

る「システム部希望のるくぷるです。よろしくお願いします。」

そう言った瞬間、会場が軽くザワついた。

システム部希望ってことはあの子が、、、あの子が噂のるくぷるくんか、、、

そんなことを言われているような気がした。

懇親会では、面談で話した人事役員さんはもちろん、他にも色々な社員の方とお話しすることができた。

懇親会が終了の時間になると、僕はすぐに会場をあとにした。





懇親会の帰り道、同じテーブルにすわっていた男と話しながら帰った。

他愛のない話しをしていると、なんとその男と僕はすぐ隣の高校へ通っていたことがわかった。

一気に打ち解けたような気がした僕らは、SODに入るかどうかの話しをはじめた。

る「隣くんはSOD入る気あるの?」

隣「多分入らないと思う。俺の学校看護系やから、そのまま病院になるかなあ。るくぷるくんはどうするの?」

る「僕は、、、めっちゃ悩んどる。両親の承諾書がなぁ。」

隣「うん、難しいやんなぁ。」

そう、アダルト業界なだけに、SODに入社するにはなんと両親の承諾書が必要なのである。





家に帰って一息つき、今後のことについてゆっくり考えた。

お話しさせてもらったSODの社員さんは、みんな楽しくて本気でエロについて考えていた、ような気がする。

僕はあの人達と一緒に働きたい。SODなら仕事にやりがいを感じられるかもしれない。

両親の承諾書なんて、適当に誰かに書いてもらえば済む話しやけど、親に嘘をついて社会人になるのは嫌やし、内定をもらっただけでずっと待たせるというのも悪い話しだ。

僕は、SOD入社について、両親と相談することを決めた。





まずは両親と相談する前に、まわりの友人に話しをしてみた。

ほとんどの友人は、絶対入ったほうがいい、天職だよ!と言ってくれた。

実際そう思ってくれてる人もいたとは思うけど、大半がからかい半分で言っていることは分かってた。

僕も友人に同じ相談をされたら、もし働いたほうがいいと思ってなくても絶対SOD入れって笑いながら言うだろう。

しかし、そんな中、一人だけ本気でやめとけと言ってくれた友人がいた。

僕はそいつに、何でそう思うの?と聞いた。

友人は、普通に考えてやめたほうがええやろ、と答えた。

僕は、友人に真剣に答えてくれてありがとう、と伝えた。

それが、大半の一般的な意見であることは分かってた。





その後、僕は両親がいる三重へ帰郷した。

家に帰って、まずは母へSODについての話を始めた。

母は、あんたが好きなようにやったらええ、と優しく答えてくれた。

さあ、あとは父を説得するだけだ!

僕は、父とSODについての話しをした。

長い時間話したわけでもなく、父はお願いだから普通の会社に入ってくれと僕に頼んだ。

まあ、そうやんな。

そう思った。





僕は自分の部屋に入り、また一人考え込んだ。

結局、僕がしたいことって何だったんだろう。

SODに入って頑張ることが、本当に僕がやりたいことなのだろうか。

楽しそうだからって理由で適当に選んだだけなんじゃないか。

やりたいことがないんだったら、せめて親孝行したほうがいいだろう。










そう、考えるようにした。










僕は東京に戻り、電話で人事にSODへ入社しない旨を伝えた。

人事は、あっさり分かりましたといって電話を切った。

僕はその後、役員との面談時に話していたソフトバンクの子会社から内定を貰い、そこへ入社することに決めた。

僕がその会社を選んだ理由は、初任給が高いから、その一点のみだった。

偶然にも、僕の入った会社はWEB解析の分野でSODのHPリニューアルに大きく関わっていた。

複雑な思いだった。





入社してから1年と半年、できるだけ頑張ってはいたのだが、同じ部署の人とそりが合わなかったり、営業への異動が認められなかったこともあり、僕は会社をやめた。

希望していた異動先の部長が僕を説得しにきてくれたりしたのだが、僕の考えは変わらなかった。

あとから聞いたところ、僕が入った部署は新人が入ってもすぐ潰れてしまう有名なところで、そこにいる社員もみんなから敬遠されるような人が多かったらしい。

みんな、そんなことを僕がやめると報告したときに教えてきた。

実際、入社して少ししたら、朝6時まで働いて9時にまた出社なんてことも何度もあった。残業をしすぎという理由で始末書を書かされたこともあった。

同期に、そんな働き方をしているやつは一人もいなかった。

また、同期の異動願いは概ね承諾されていた。

今となってはどうでもいいことだけど、ちょっと運が悪かったなと思った。

会社をやめてから一ヶ月ニート期間を満喫し、僕は三重に帰った。










趣味を仕事にするということは、とても難しいことだ。

また、それを続けていくというのはもっと難しい。

もし僕の父が承諾してSODに入社していたとしても、人間関係の問題や、精神面の問題などで退職してしまう可能性だってある。

また、僕が営業に異動できていたら、まだ前の会社で頑張っていた可能性もある。

なんにせよ、自分にやれることを頑張るしかないんだ。

自分にやれることを、模索しないことだけがやっちゃいけないことだ。

そんな気がしている。

簡単なことじゃないと思う。

けど、そういう人は、めっちゃキラキラしてる。










るくぷるは、夢溢れる就活生とプロゲーマーのみなさんを応援しますっ☆