IMJ社長と1対1で行われた最終選考。

面接は順調に進んでいったが、最後の質問で大きなモヤモヤを抱える。

でも、大丈夫と言ってくれた人事の言葉を信じ、結果発表を待つことしか出来なかった。

結果は、不合格だった。










不合格通知を受けてから、何もやる気が起きず、家でゴロゴロする日々が続いた。

でも、周りから内定をもらったという声が聞こえてきて、どんどん焦りが大きくなる。

僕はまた、適当なIT企業にエントリーしながら就職サイトを巡っていると、一つの会社に出会った。

今でも忘れない、あれはエンジャパンという就職サイトだった。

会社名は、「ソフトオンデマンド」(以下SOD)といった。

業界ではなかなか有名な会社で、アダルトビデオをつくっている会社だ。

昔、社長がマネーの寅に出演していたこともあった。





AV男優、男なら誰でも一度は夢みる職業だ。

もちろん僕だって考えたことはある。

しかし、AV男優になることは、人生においてあまりにもリスクが高すぎる。

ラブホテルなどで閲覧できるペイチャンネルの番組に何度か出演してみたりはしたのだが、いつのまにかAV男優になることは諦めていた。

でも、AV男優としてではなく、制作側なら。

制作側であれば、働くことは可能かもしれない。ここで僕とSODが出会ったのは、運命なのかもしれない。

そう思った。

僕はすぐにエントリーを済ませ、説明会の予約を試みた。

しかし、アダルト業界の会社であるにも関わらず、説明会は全て満員で予約できなかった。

そこから毎日説明会のキャンセルがないか確認を行い、なんとか説明会を予約することができた。





説明会当日、スーツを着て新中野の本社ビルへ向かう。

まだ説明会ということもあって、特に緊張はしなかった。

一階の受付で名札をもらい、説明会の会場まで階段であがる。

二階から上は、すごい数のDVDが並んでいたり、女優さんが面接を行っていたりして、とてもワクワクしたのを覚えている。

説明会では、会社内の詳しい説明や給料待遇などの話しがあったのだが、最後に次のような話しがあった。

例えば、アメリカではプレイボーイに掲載されている女の人のことをプレイメイトといい、それは名誉なことだ。他にも、同じような傾向が見られエロにたいして寛容な国は多い。我々SODは、日本のエロを、後ろめたいことのない、もっと明るいものにしていきたい。という話しだった。

そのあと質疑応答があり、社員がやっちゃいましたシリーズは本当に社員が出演しているのか?社員の既婚率はどうか?などの質問があり、説明会は終了した。

社員シリーズは流石に企画女優が出演しているそうだ。でもナンパモノはガチでやってる作品ばかりで、そこは勘違いしないで欲しい、と熱弁していた。既婚率はもちろんめっちゃ低いそうだ。

帰るとき、前社長の高橋がなりさんが現在百姓をしている関係で、熟女ライスというお米を頂戴した。

一人暮らしには有難かったが、なんか食べる気がしなかった。





SODの考え方に強く共感していた僕は、その後の選考に参加していった。

ペーパーテストや人事との面談を経て、SOD役員数人と就活生数人の集団最終面接へ辿り着く。

面接で聞かれる質問は、普通の会社と同じようなことばかりなのだが、仕事内容がアダルトなので、こちらの返答がアダルトになっていった。

色々な質問の中で、「あなたはSODに入って何を成し遂げたいか?」というものがあった。

すごくアホそうな男の人や、早稲田だか慶応だかの女の人が質問に答えていく。

最後に自分の番がきて、僕は下記のようなことを語った。

『私は御社の説明会で言っていた、日本のエロをもっと明るいものにしていきたい、という考えに強く共感しています。なぜなら、日本のエロにはグレーゾーンが多く存在しているからです。例えば、ソープランドは個室のあるお風呂屋さんというくくりになっていて、汗を流すためにいる女性従業員とムラムラしてしまった客が同意のもとセックスしている、という建前のもと営業が行われております。また、御社のヒット商品であるTENGAも、使い方は誰でも分かっているのに、ただの玩具として販売されております。さらに、TENGAは有名なグッドデザイン賞に選出され一時審査を突破したにも関わらず、性具であるという理由でその後の審査から除外されたという話しも聞いております。どうすれば日本のエロを変えていくことができるのか、それはまだ僕には分かりません。しかし、同じ考えを持った社員のみなさまと共に働き、SODの一員として、日本のエロに深く関わっていきたいと考えております。』

面接が終わり、僕は家路についた。

言いたいことは言った、あとは結果を待つだけだ。

僕は何か清々しいような気持ちになっていた。










面接の翌日、人事から電話がかかってきた。

結果は、合格だった。










続く。