東京・新宿に慰安婦展示室

市民ら「慰安所の存在を知り衝撃」

 早稲田大学(東京都新宿区)近くの細い道を4-5分歩いていくと、キリスト教団体が入居する「AVACOビル」がある。同ビル2階の115平方メートルという小さなスペースに「女たちの戦争と平和資料館」が設けられている。日本で唯一、良心の声を伝える旧日本軍の性奴隷(強制動員された慰安婦)関連展示施設だ。

 中に入ると、前室の赤い壁いっぱいに慰安婦被害者10カ国・155人の顔写真が展示されていた。「記憶の扉を開いた女性たち」というタイトルの案内文には「偏見や中傷・謀略を恐れて沈黙していた女性が被害体験を公開証言したのは奇跡だ。彼女たちの声を聞かなければならない」と書かれている。

 展示室の中には昭和天皇やA級戦犯の東条英機ら第2次世界大戦時の日本の指導者9人の写真が掲げられている。説明文には「(これらの人物は)慰安所制度の存在を承認・関与していたため強姦(ごうかん)や性奴隷問題に対する責任を取るべきだ」と指摘されている。また、大きな地図パネルには旧日本軍が戦争中に設置した数多くの慰安所の位置がびっしりと表示されていた。池田恵理子館長(62)は「日本には博物館がたくさんあるが、旧日本軍の従軍慰安婦問題を正面から取り上げているのはここだけ。安倍晋三首相や橋下徹大阪市長がこれらの展示物を一度でも見たら、慰安婦の強制動員を否定するような妄言は出てこないだろう」と言った。

 展示室で性奴隷問題を初めて知った日本人たちの衝撃は訪問録に残されている。「20歳まで従軍看護婦と従軍慰安婦の違いを知らなかった」「日本に慰安所があったことをここで初めて知った」「慰安婦問題を日本政府が隠していたことをこの目で確かめた」…。展示室で会った台湾からの留学生ディン・チャオジュさん(27)は「日本の市民団体がこのような施設を運営していることに驚いた」と話した。

 「従軍慰安婦に関する記述は1997年にはほぼ全ての教科書に掲載されていたが、2002年以降はほとんどの教科書から削除され始めた」という内容の展示もあった。衛生兵として従軍した野村盛明氏らが慰安所の管理に関与したという証言が展示されているなど、加害者側の証言や関連裁判資料もあった。

 東京のど真ん中で2005年に「性奴隷展示室」をオープンさせることができたのは、02年に死去した朝日新聞元記者の市民運動家・松井やより氏ら良心的な日本人の尽力があったからだ。松井氏は2000年に東京で行われた模擬裁判「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」で収集した被害女性の証言や関連資料を展示する場所を探していた。NHKのプロデューサーとして慰安婦に関する番組制作に携わった池田氏は「当時の国際戦犯法廷で数々の証言や資料が確保されたが、日本のメディアではほとんど報道されなかった。これを無念に思っていた松井氏が02年に逝去されたため全財産と関連資料が寄付され、募金運動を通じ展示室が作られた」と話す。一部の極右派が「売春婦展示館」「売国施設」などと非難を浴びせ、脅しをかけることもあった。

 展示室は会員約1100人の寄付金や入場料などで運営が維持されているが、毎年500万円前後の赤字を出しているため、ゆくゆくは閉館に追い込まれるのではないかとの懸念もある。展示室運営委員の西村由美子氏(63)は「場所が狭いので多くの資料が倉庫で眠っているのが残念だ。慰安婦問題の実体を広く知ってもらうため、市民団体と協力し地域巡回展示会も開いている」と語った。

東京= 車学峰(チャ・ハクポン)特派員
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  • ▲旧日本軍に強制動員された慰安婦に関する展示施設「女たちの戦争と平和資料館」(東京都新宿区)で20日、ボランティアやスタッフと展示室の運営について話す池田恵理子館長=写真右=。後ろの壁には旧日本軍に強制動員された慰安婦被害者10カ国・155人の顔写真が展示されている。/写真=東京・車学峰(チャ・ハクポン)特派員
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