会社が求人を行うとき、応募してくるのは必ずしも自社が必要としている人材ばかりではない。新しいことに挑戦する人材を求めているのに、給料と休みばかり気にする人が応募してきたり、華やかな企業イメージに魅せられて応募してきた人が、実は地味で粘り強さが求められる仕事にガッカリすることもある。
通信販売サービスを運営しているある上場企業では、マーケティング調査に必要な知識や経験を持っている人材を求めていた。しかし応募してくるのは、サービスのイメージから「雑貨が大好き!」な女の子ばかり。大量の商品やデータを扱ったりする仕事に向いた人を採用することができなかったという。
そこで考えたのが、「マージャン大会で上位入賞した人」から選考するという採用方法だ。この採用方法をサポートしたのが、就活サイト「ミートボウル」を運営するカケハシ スカイソリューションズだ。
「ミートボウル」では、学生が学歴を伏せて「自分が得意なこと」や「変わった経験」を登録し、会社からスカウトを受けるスタイルを採っている。カケハシ スカイソリューションズ広報担当の池田園子さんは「マージャン採用」の有効性について、次のように説明する。
「やっぱりマージャンで強い人ってのは、努力してるんですよ。強くなりたいと思って雀荘の年配のベテランの方に、熱心に教えを請うたりしている。雀荘に入り浸る人なんて、よっぽどマージャンが好きなわけですからね」
従来は、いかにも会社員的なマナーやコミュニケーションが得意な人が、複数企業の内定を得る傾向にあった。一方で、暇を惜しんで雀荘に通っていたような「意識の低い学生」は、就活戦線において不利とされてきたわけである。
しかし実際の仕事につけば、より重要なのは「数学的・論理的志向」だったり「戦略的思考」だったり、「負けず嫌いな性格」だったりする。そのような資質は、通常の面接よりも「麻雀大会」の方がより確認しやすいということなのである。
実際、マージャン大会で優秀な成績をおさめ、その通販会社に採用されたのは、旧帝大卒の薬学部の男子学生で、その後も仕事で能力を発揮している。普通に募集すれば、なかなか応募してこない人材のマッチングに成功したと、会社も喜んでいたという。
「ずっと大人しく一言も発しなかった人」にもチャンスがある
ゲームの能力が高い人はビジネスにも力を発揮する、という説は、「会社をつぶせ」の著者リサ・ボデル氏も唱えている。
複数の人間が同時参加できるオンラインのロール・プレイング・ゲーム(RPG)は、プレーヤー同士が共通の目標を達成するために力を合わせる必要がある。そういうことができる人材は、イノベーションを起こす仕事に向いているというのだ。
マージャン採用は、税理士法人や社労士法人の経営者からも評価されている。
「確かに資格を持った専門家には、まじめなイメージがあるし、実際そうかもしれません。しかし組織体なのだから、いろんな人が欲しい。この法人の場合は、もっとフランクな人材が欲しかったそうです」(池田氏)
マージャン大会以外でも、求職者の本当の力を垣間見る機会がある。4人チームを組んで複雑なゲームをする「頭脳ゲーム採用」では、失敗するたびに原因を話し合うのだが、チームに貢献するのはリーダーシップを発揮する人ばかりではない。
「それまで大人しく一言も発しなかった学生が、ずっと黙って戦況について考えていて、チームがピンチのときに思わぬアイディアを出してくれることもあるんですよ」(同)
これまでイベントは、フェイスブックとツイッターだけで告知を行なってきた。SNSを通じて集まってきた人たちは、情報感度の高い人ばかり。口コミで拡散中だという。今後は「まったく誰とも話さない仕事」に向いてる人の発掘なんてのもあり、というから、一般的な就活にうんざりしている人は注目してみてはどうだろう。
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