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ヨウ素剤配布、めど立たず 青森の5市町村、責任を懸念

県が住民配布用に用意した安定ヨウ素剤

 原子力事故による甲状腺被ばく対策として、安定ヨウ素剤を住民に事前配布することが、原子力規制委員会が改定した原子力災害対策指針で決まった。原発を抱える青森県では、対象の市町村が副作用を懸念し、配布実現のめどが立っていない。「トラブルが生じた際の責任の所在も曖昧」との声もあり、自治体は慎重な姿勢を見せている。(青森総局・狭間優作)

 青森県医療薬務課によると、県内では東北電力東通原発のある青森県東通村と、むつ市、六ケ所村、横浜町、野辺地町の5市町村が配布の対象となる見込み。配布人数は今後算出する。
 ヨウ素剤の事前配布については、医師の指示なしに処方できない薬事法の壁があった。厚生労働省は「指針通り適切に配布すれば問題ない」と判断し、事前配布に踏み切った。
 ただ、自治体側はヨウ素剤による嘔吐(おうと)や下痢などの副作用を心配する。
 東通村の担当者が胸の内を明かす。「日常と非常時では、人の行動は異なる。事故が起きて放射能が襲うとすれば、冷静になれない人もいるだろう。必要以上にヨウ素剤を服用してしまう可能性がゼロとはいえない」
 放射線医学総合研究所(千葉市)などによると、ヨウ素過敏症の人が服用した場合、アレルギー反応を起こす可能性がある。新生児や妊婦の胎児が摂取すると、発育に影響が出る恐れもあるという。
 東日本大震災では、うがい薬が代わりになるという虚偽の情報がネットで拡散。厚労省が「副作用で体を壊す」と注意する事態もあった。
 トラブルが生じた際、責任を負うのは国なのか、配布した自治体なのか。県医療薬務課は「責任の所在が曖昧なままで、住民に配布することはできない」と説明。国のさらなる指針を待つ考えだ。ヨウ素剤の配布時期は不明という。
 原発事故で放出される放射性ヨウ素は半減期が短く、安定ヨウ素剤は予防的に飲むか、早めに服用しないと効果がない。福島第1原発事故では、自治体で備えていたヨウ素剤をほとんど活用できなかった。
 「小さな副作用を心配するより、早めに服用する方が重要だ」との指摘もあるが、配布にはまだ時間がかかりそうだ。

 [メモ]原子力規制委員会が5日改定した原子力災害対策指針により、原発から半径5キロ圏内の住民と、原発事故時に迅速な配布が困難な圏外の住民には、自治体がヨウ素剤を事前配布する。自治体は医師立ち会いで住民説明会を開き、服用目的や副作用について説明する。緊急時の服用時期は規制委が判断する。


2013年06月22日土曜日


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