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海側井戸で放射性物質/全力で原因究明し拡散防げ(6月21日付)
東京電力福島第1原発で、2号機タービン建屋東側(太平洋側)に設置した観測用の井戸の水から、法定基準の約30倍に当たる高濃度の放射性ストロンチウムと約8倍のトリチウムが検出された。
観測用井戸は、もともと原発港湾内の放射性物質濃度が高止まりしている原因を調べるため昨年11月から12月に設置したものだ。今年5月24日に採取した水を分析したところ、1リットル当たりストロンチウム90が千ベクレル、トリチウムが50万ベクレル検出された。昨年12月の測定時に比べストロンチウムが約116倍、トリチウムは約17倍に上昇していた。今回の高濃度放射性物質の検出を機に、原因究明を加速させるとともに、放射性物質が海へ流出することがないよう拡散防止に全力を挙げてもらいたい。
観測用井戸は、原発事故直後の2011(平成23)年4月2日に極めて高濃度の汚染水の海洋流出が確認された作業用の穴の北側約28メートルにある。東電は、当時の汚染水が地中に染み込み、残留したものを、今回検出した可能性が高いとみている。
井戸から海までの距離は27メートル。東電は「海水に影響は出ていない」として、新たな海洋汚染には否定的な見方を示しているが、その根拠は「海水の放射性物質濃度は過去の変動の範囲内にある」ということだけで確認はできていない。
東電は、観測用井戸の周囲4カ所に新たな井戸を掘り、放射性物質の拡散状況を調べるとともに、海への流出を防ぐために護岸壁内側の地盤に水の浸透を防ぐ薬液を注入して固めるなど地盤改良を進めるという。効果的な対策を確実に講じてもらいたい。
原発の汚染水対策として東電は、建屋手前で地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」を計画している。しかし、今回の高濃度放射性物質の検出で、同計画とは別の新たな汚染水問題が浮上した形となった。より海に近い場所での問題であり、最優先での対応を望みたい。
県は、高濃度放射性物質の検出を重く受け止め、東電に原因究明と安全対策の徹底を求めた。一方で、原発周辺の海域で独自に行う予定のモニタリング調査を拡充し、原発敷地境界の北側と南側で放射性物質濃度を調べることを決めた。県としても放射性物質による海洋汚染の影響調査を徹底するなど、監視体制を一層強めてほしい。
原子力規制委員会は今回の事案に関して、東電が5月末に数値の異常を把握しながら、規制委への報告が6月17日になったとして「速やかに報告するべきだった」との認識を示した。県や関係市町村への報告はさらに遅い19日だった。公表の遅れは県民の不安と不信感を増幅しかねない。東電には速やかな情報の公表を重ねて求めたい。
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