読書感想  新井輝


「ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック」
(富士見ミステリー文庫/富士見書房)

 クラスメイトの大海千夜子に告白された日、絹川健一は不思議な鍵を拾った。 それはとあるマンションのあるはずのない13階の鍵だった。 芸術家のアヤと出会い、健一は恋愛について考えはじめる。
 なんだこのエロい展開はー。出会ったばかりの女の子と初えっちというのはまだしも、実姉ともやってしまうというのは如何なものか。 あのーもしもしこれって美少女文庫でしたっけ?いや富士見ミステリー文庫なんです。 へーLOVEってミステリー? …去年リニューアル前の富士ミスの迷走ぶりが如実に現れでた作品のような気がするなあ。
ラブストーリーというよりは美少女Hマンガのノリ。 官能シーンの描写はばっさりカットしてあるけれど、話の流れはまんまそんな感じ。 ミステリ要素は0だし、まったくもー、なんでこんな作品が富士ミスで出てるのやら。 しかも続くらしいですよ。まあ、出るならしょうがないから読みますよ(えー
(2004 1.27 読了)



「ROOM NO.1301 #2 同居人はXXXホリック」
(富士見ミステリー文庫/富士見書房)

 恋という謎の答えを求める健一の探求の物語。 健一と同じ部屋の鍵を拾った有馬冴子が新たに13階の住人に加わることになった。 誰とでも寝る女という悪い噂をたてられている冴子。その理由は…?
 富士見ミステリー文庫であることを度外視してエロゲー風のライトノベルだとわりきってしまえば、 面白く読めるような気がしてきた。 この作品そもそも登場人物表からして、”健一とH済み”とか”Hはまだ”とか書いてあるわけで。 最初見たとき思わず噴き出してしまいましたよう。撃墜マークかよ、こんちくしょう(笑)。 内容はといえば、やたらエロエロしかった前作よりはキャラの会話だとか関係性を描くことに目が向けられていて、まあまあ良かったです。 エピローグとして書かれている蛍子視点のお話は特に良かった。 でも、本編の方はやっぱり美少女Hマンガな展開で、あっさり状況に流されてしまう健一くんに半笑いですよ。もー、何やってるんだか。 ということで、次回の登場人物表では3人の女の子に”健一とH済み”と書かれてしまうのですか?  これ、シリーズ続いて5〜6冊目が出るあたりには一体どうなっていることやら。
(2004 6.12 読了)



「ROOM NO.1301 #3 同居人はロマンティック?」
(富士見ミステリー文庫/富士見書房)

 絹川健一は千夜子たちと夏休みに海に行く予定をたてていた。 一方、13階の住人たちとの生活も続いている。 新たに知る綾の一面。冴子との肉体関係。姉・蛍子とのすれ違い。 僕は恋愛に向いていない──シリーズ第三弾。
 キャラクタ配置や流れだけ見れば女の子いっぱいのハーレム作品ってな話なのに、単純にそうとは言えないこの微妙な魅力にはまってきた感。 前巻までは、健一が出会う女の子とことごとくHをしちゃう展開を、もうしょうがないなーなんて思いながら茶化して読んでた感じがあったのに、 三巻読了後の今は普通に話の先が気になってますよ。 健一と千夜子の初々しい関係とか、その横でやたら健一の背中を押したがるツバメの言動・行動なんかは普通にラブコメとして楽しめるし、 前巻のエピローグを読んでいるぼくら読者としては、蛍子の言動の裏にある想いが非常に痛々しく胸に迫ってくる。 一方では、冴子に情をよせはじめる健一の心情だとか、綾の孤独さも描かれたりしてて、13階の住人たちにもフラグがたちはじめてるし、なんかもう大変だあ。 しかも、彼ら彼女らの行く末はすでに決着していることがわかっているだけに、より切なさとか刹那さを感じてしまう部分があるわけで……。 エピローグ<ああー、どうするのさー、こんな展開。
(2004 9.14 読了)



「ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック!」
(富士見ミステリー文庫/富士見書房)

 姉の蛍子は健一のことが好きだった!? ──思い悩む健一をそれぞれのやり方で励まそうとしてくれる女の子たち。 そして、1305の鍵を持った”シーナ”が新たな住人として13階に加わることに…。
 前回が健全だったのは溜めだったのか、序盤から恥ずかしい展開で飛ばしてくれてます。 うわーい、カラー口絵の蛍子たんがエロいぞちくしょうめ。挿絵もなんて直接的な。そして、凹み展開にあうううう。 これまでなんとなく流されてるままだった健一がようやく本気で思い悩みモードに入る… ように見せかけて、 シーナの馬鹿テンションのおかげで序盤の切ない雰囲気がどっかいっちゃいました。なんてこった。 でも、鬱々とした暗い展開になられるよりはこういう感じで転がった方が楽しく読めていいのかも。 蛍子とああなったところでシーナと健一が出会ってしまったという流れはなかなか悪くないし、シリーズも4冊目をむかえてますます話が面白くなってきた感。 次への期待がどうしても高まってしまう引きも素晴らしいことこの上なし。「くわーーーー!」。 さあ、これで窪塚姉妹が健一とどうにかなるような展開を見せたら驚愕なんだけど、一体どうなることやら。
(2004 12.18 読了)



「ROOM NO.1301 #5 妹さんはヒロイック?」
(富士見ミステリー文庫/富士見書房)

 ストリートライブで躍動するシーナ。おとなしい美少女風情の窪塚日奈。 シーナは親友で、日奈はよく知らない女の子…。 彼女の想いを応援したい健一ではあるのだが…。
 今回はそんなに劇的な展開が用意されてるわけでもないのに、最後までページをめくる手が止まらない。 なんかもう、とんでもなく面白いシリーズになってしもた。参ったなあ。 シーナ(日奈)の二面性や不安定な立ち位置、想い人とのすれ違いのさり気ない描き方が良い。 かと思えば、後半はおバカなエロエロ騒動が待ち構えていたりするわけで…。 あははー、久しぶりに暴走する綾さんがエロ面白っ。 お風呂騒動の萌え挿絵ごっつぁんです。 他にも、健一と千夜子の仲がじわじわ進展中だったり、”彼女の友達”なツバメが健一に転びそうな気がしたりしなかったりする微妙な距離だとか、 シーナのこと以外にも読みどころ有り過ぎですよ。 「ツバメは健一さんのことで怒り過ぎ。なんだかツバメの方が彼女みたいで、私、そっちの方が不安になるかな」。 千夜子ちゃん鋭いこと言った! …くふふ、三角関係とか期待しちゃっていいのかしらーん。 それから、プロローグ部分に関して、これまでは過ぎし日へ想いを馳せるというような感傷的な色合いが強かったのが、 今回は、離ればなれにはなってしまっていても皆それぞれ幸せにはやって…るのかな?”な雰囲気になっていて、ちょっとホッとした。 みんな幸せになってほしいよね。
(2005 3.12 読了)


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