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月刊チャージャー5月号
【調査】まずは疑って係!/やってる人に聞いてみました
「セックスボランティア」って必要なのか? |
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「セックスボランティア」は、障害者の性行為に対する介助を意味する言葉だ。2004年に河合香織さんの著書『セックスボランティア』がベストセラーになって広く知られるようになったとはいえ、一般的には誤解されたままというのが現状ではないだろうか。はたして現場で何が行われているのだろうか。実際に活動に取り組んでいる人たちに話を聞いて、セックスボランティアが必要な理由を考えてみる。 |
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セックスボランティアという言葉は、直訳的に「性愛の無償奉仕」と誤解されて広まっていないだろうか。また、最近では障害者だけでなく高齢者への性的介助も含んだ問題として語られることが多い。そもそもタブーにされがちな「性」に関する問題であるだけに、介護や福祉と縁遠い生活をしている者にとっては「何が行われているのかさえもよくわからない」というのが現実だろう。今回の取材は、新潟市で脳性マヒの方の性的介助を行う『ホワイトハンズ』を訪ねるところから始まった。
代表者の坂爪真吾さんは1981年生まれの28歳。東京大学を卒業後、介護ヘルパーなどを経験した後、2008年4月に『ホワイトハンズ』を立ち上げた。現在は「脳性まひの方の性に関する尊厳と自立を守る」という理念を掲げ、脳性まひの人に対象を絞った射精介助を行っている。
「性の問題には、大きく分けて3つの側面があります。愛情表現(ラブ)、性的娯楽(エロス)、そして生理現象としての側面です。性的介助の問題は、こうした多様な側面がごちゃまぜに語られることが多かった。『ホワイトハンズ』では、脳性まひなどによって自力で射精できない人に対して生理現象としての側面からサポートを行うことで、射精介助を社会性のある活動として確立することを目指しています」(坂爪さん) |
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射精介助とは、ヘルパーが重度身体障害者の自宅などを訪ね、介護用手袋をした手でコンドームを装着した性器を刺激して射精に導くこと。女性ヘルパーが男性の射精介助を行うケースが多いので、現状では風俗営業の許可が必要だ。
坂爪さんは『ホワイトハンズ』の活動を確立する過程の中で、障害者でも利用しやすい風俗店を利用する方法も模索したという。でも「風俗店には経営母体などが謎めいたところも多く、信頼できるネットワークにするのが難しい。そもそも障害者の性の問題を風俗で解決しようという発想が違うのではないかと考えました。デリケートな問題だけに対象や目的を絞らないと社会性が確立しづらいこともあり、脳性まひなど自力で射精することが困難な方への射精介助という活動に限定しました」(坂爪さん)という。
『ホワイトハンズ』の射精介助は有償のサービスだ。坂爪さんは「極論すると『セックスボランティア』という言葉は一日も早く死語になってほしいと思っています。性の問題に障害者と健常者の区別なんてありません。私自身の経験上、文字通りのボランティアで、タダで射精介助をしてほしいと望んでいる障害者は皆無です」という。『ホワイトハンズ』は今のところ全国13都市に拠点があり、各地のスタッフが活動を行っている。
公式サイトなどでは『NPO ホワイトハンズ』という名称が使われているが、現状はあくまでも任意団体で、「特定非営利活動法人」として行政の認証は受けていない。社会的な理解を広め、『ホワイトハンズ』が特定非営利法人としての認証を得て、射精介助に介護保険が適用されるようにすることが、坂爪さんの目標だ。 |
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●次のページは、「実際にヘルパーとして働く女性の思い」 |
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