貯金１５の余裕からか、それとも――。２１日からのリーグ戦再開を前に、巨人・原辰徳監督（５４）の“総監督化”がチーム内で議論を呼んでいる。選手へ直接指導も施すなど、積極的に動くのが指揮官のスタイルのはずだったが…。その背景には何があるのか。

「昨日といい今日といい、ああいう監督の姿は珍しい」。球団関係者からこんな声が上がったのは２０日、ジャイアンツ球場での全体練習の時だった。普段ならば打撃ケージ裏に陣取り、熱心に打撃練習に見入る原監督が、開始から終了までのおよそ１時間半、ベンチに腰を下ろしたまま報道陣と談笑していたのだ。

　実は前日の１９日も、高校時代の先輩が訪問していたものの、練習時間の大半をベンチで過ごした。その際、近くにいた報道陣を見つけ「メディアとは勝っても負けても話をする。それが仕事だと思っているし、俺も楽しもうと思っている。楽しんでいるんだよ！」と笑いながら語っていたが、これまでは練習日であっても、報道陣はもちろん来客への対応も練習の前後に行っていたはず。それだけに原監督の“らしくない姿”は、チーム内には印象的に映ったようだ。

　第１次、２次あわせ、監督就任１０年目にして見せるこうした姿は何を意味するのか。２位阪神に２・５ゲーム差をつけて首位を走っている現状もあるだろうが、関係者の間では「それ以上に昨年の日本一で『チームとして成熟した』ことを実感したからではないか」の声が少なくない。

　かねて原監督は「ジャイアンツは分業制」と言ってはいたものの、完全に預けることはなかった。昨季、不振の村田を試合途中で帰宅させたときも、指揮官の独断によるもの。しかし、最近では遅刻で二軍落ちした中井への具体的な処分内容を川相ヘッドコーチに出させるなど、自らが最終決定する前の過程については首脳陣に一任するスタイルを取りはじめている。

　この日、練習を“任された”格好となった川相ヘッドは「監督から任された？　別に監督から何か言われたわけでもないし（ケージ裏に出なかったのは報道陣と）楽しく話してたからじゃないですか。それに僕はそこまでの人間じゃないですよ」と語った。

　日本一連覇を目指しつつも、変化しつつある原監督の立場。現場をすべて首脳陣に預け、自らを“総監督化”することで、チームをさらなる高みへと導こうとしているのか、それとも自分が「いなくなった後」のことを考えはじめているのか…。今後の采配と同時に注目だ。