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kojitakenの日記

2012-10-20 もっとも鋭い石原慎太郎批判を放ったのは本多勝一だと思う

もっとも鋭い石原慎太郎批判を放ったのは本多勝一だと思う

佐野眞一の「ハシシタ」の件だが、事実を不可視化する方が有害だ - kojitakenの日記 へのコメントより*1

id:bogus-simotukare 2012/10/19 06:47

佐野が石原本『誰も書けなかった石原慎太郎』(講談社文庫)を以前書いたとき今回と似たようなことを言っていたのを思い出しました。ちなみに後に『空虚な小皇帝石原慎太郎』(岩波書店→後に講談社文庫)を書いた斎藤貴夫と対談したときも斎藤から「僕は都知事になった石原の政策(日の丸君が代押しつけ、築地移転計画、新銀行東京差別暴言など)に興味があるし、そこを批判するのが有益だと思ってるけど、どういう学生生活を送ったかとか出自にこだわる佐野さんは違うんですね」と言ったことを思い出してああ、今回も変わらないんだなと。個人的には佐野本より斎藤本の方が俺は好きですが。佐野本は石原への政策批判があまりないんで。


以下の文章は私の個人的な感想に過ぎませんが、佐野眞一石原慎太郎を描いた『てっぺん野郎 - 本人も知らなかった石原慎太郎』(講談社, 2003年)は、ハードカバーで出た時に買って読みました。正直言って期待外れで、今に至るも佐野本の中では最低の出来に近いのではないかと思っていますが、それは、佐野が石原の政策ではなく出自にばかりこだわっていたからではなく、「石原の一番痛いところを突けていない」というもどかしさを感じたからです。斎藤貴男の『空虚な小皇帝』(岩波書店, 2003年)もハードカバーで買いましたが、こちらもあまり良いとは思いませんでした。両方とも、読んだ数か月後には中身を思い出せなくなっていました。斎藤の著書についても「石原の本当に痛いところを突けていなかった」と思いましたね。石原批判に関しては、佐野・斎藤両氏の仕事よりも週刊誌による数々の石原批判の方がインパクトがあったくらいです。私は佐野眞一の代表作は『カリスマ』と『巨怪伝』(有名な『東電OL殺人事件』は、あまり買いません)、斎藤貴男の代表作は『梶原一騎伝』だと思っています。


てっぺん野郎―本人も知らなかった石原慎太郎

てっぺん野郎―本人も知らなかった石原慎太郎


空疎な小皇帝―「石原慎太郎」という問題

空疎な小皇帝―「石原慎太郎」という問題


私にとってもっとも印象的だった石原批判は、本多勝一によるものです。以下、『週刊金曜日』2000年7月7日号より。

 想えばもう三十余年も前(1967年)のことになります。ルポ『戦場の村』(朝日新聞連載、のちに朝日文庫)を書くため南ベトナム(当時)に滞在中、石原慎太郎ベトナムへやってきました。私がサイゴンにいるときだったので、何かの会合で他の記者たちと共に会ったことがあり、その帰りの夜道でニューギニアについて彼と話した記憶があります。

 そのあと彼はサイゴンを離れて何ヶ所かの前線を取材に行ったようですが、肝臓だかを悪くしてひどい下痢で活動できなくなり、まもなく帰国したという噂をききました。もともと真の冒険家ではありえない人だから、修羅場には弱かったのでしょう。

 それからほぼ一年のち、南ベトナムから私が帰国してまもなく、報道写真家石川文洋が『ベトナム最前線』というルポルタージュ読売新聞社から刊行しました。これに序文を寄せた石原の文章を読んで、次の部分に私は少なからず驚かされることになります。


 ベトナム戦線Dゾーンのチャンバンの砲兵陣地で、訪れた我々日本記者団に向かって、試みに大砲の引き金を引いて見ないかと副官にすすめられたことがある。(中略)番が私に廻って来そうになった時、同行していた石川カメラマンがおだやかな微笑だったが、顔色だけは変えて、「石原さん、引いてはいけません。引くべきでない。あなたに、この向こうにいるかも知れない人間たちを殺す理由は何もない筈です」といった。

躊躇(ちゅうちょ)している私に、陽気な副官は鉄兜をさし出し、"Kill fifteen V.C.!" と叫んだが、幸か不幸か突然射撃中止の命令が入り、その時間の砲撃は止んでしまった。

 私は今でもその時の石川君の、私を覗(のぞ)くように見つめていた黒いつぶらな瞳(ひとみ)を忘れない。童顔の、あどけないほどのこの若いカメラマンの顔に、私はその時、なんともいえず悲しい影を見たのだ。

 彼がもし強く咎(とが)めていたら、私は天邪鬼(あまのじゃく)にその後まで待って引き金を引いていたかも知れない。


 この文章からみると、石原は解放戦線または解放区の住民に対して、副官にすすめられるままに、大砲の引き金を引く寸前だったことになります。たまたま「幸か不幸か突然射撃中止の命令が」出たために、彼はそれを果たせなかった。もし中止命令が出なければ、第一には 「すすめられるままに」、そして第二の可能性としては「彼(石川文洋)がもし強く咎めていたら、私(石原慎太郎)は天邪鬼にその後(砲撃再開)まで待って引き金を引いていたかも知れない」 のです。

 こういう小説家の神経と体質について、私がここで解説を加えるまでもありますまい。私はこのあと解放区の取材に長く潜入していましたから、時間と場所がすこしずれれば、ことによると石原の撃った砲弾が私のいた村にとんできたかもしれませんね。

 ここに見られるように、石原はベトナムへ行ってもせいぜい陣地までしか行けはしない。石川文洋の苛烈な体験はもちろん、私がやったていどの歩兵との最前線従軍さえできず、安全地帯にいて、卑劣にもそんな中から大砲だけは撃ってみるような、子どもの戦争ごっこくらいしかできないのです。しかも石川文洋が言うとおり、石原慎太郎にとって殺す理由など何もないベトナム人を砲撃しようとする鈍感さ。この卑劣で鈍感な男が政治をやろうというのであります。


本多のこの文章は、石原の政策を批判したものでもなんでもなく、石原の人格に対する批判です。しかし、私の感じる限り、石原の出自にこだわった佐野眞一はもちろん、石原の政策を批判したという斉藤貴男の石原批判も、本多勝一を超え得ていないと思います。この本多の批判は、石原慎太郎という人間の本質を突くものでした。

今回の佐野眞一の『ハシシタ』の件で、政治家を批判する時は人格ではなく政策を批判すべきだという意見が、左右双方から多く出されました。しかし私はそれには賛成しません。人間が政治を行う以上、政治家の批評にはその人格に対する批評が欠かせないと考えています。

gondowanagondowana 2012/10/21 00:09 >人間が政治を行う以上、政治家の批評にはその人格に対する批評が欠かせないと考えています。

そこは同意しますが、では人格を批評する材料としてDNAを用いるのが妥当で、そもそもそれは許されることなのかが今回の問われてると思うのですがどうでしょうか

kirikirikunkirikirikun 2012/10/21 00:33 >政治家を批判する時は人格ではなく政策を批判すべきだという意見が

いやいやいや、ちょっと待っていただきたい。
ほらまたそうやって自己に都合のいいことを書いている。
人格ではなく出自、血脈を出して叩くのは筋違いだろうと言ってるんです。
あなたが引用している本多勝一の文章は、石原の取った行動から見える彼の人格を批判している。つまりあくまで石原本人のみの範囲において書かれている。
対して今回の問題は橋下個人の範疇を超え、本人が何ら負うべき必要のない面を狙い撃ちしているからおかしいだろうと言っているんです。
だから石原の件と橋下の件を同列に語るのはおかしい。
そもそも私には「政治家を批判する時は人格に対する批評が欠かせない」というあなたの主張自体に疑問符が付くが、もしそれが正しいならばそこに本人の出自や血脈、地域の特定ができるような方法が果たして批判方法として正しいのか、人格に対する批評として適切であるのか、疑問を抱かざるを得ない。

zenzaburozenzaburo 2012/10/21 02:35 早くもネタ切れらしく大風呂敷になってるぞ、そこの二人(?)。DNAや出自をもとに人格を批判することは当たり前です。安倍は「馬鹿だから駄目」で、あの馬鹿ぶりは母方のDNAとしか理解しようがない。石原も「臆病だから駄目」であれこそDNA。橋下の不倫は絶対に親が悪い。親がしっかり教育していればあんなことにはならなかった。

gondowanagondowana 2012/10/21 03:02 >zenzaburo
あなたが差別主義者ということはよく分かりました

kosikarikosikari 2012/10/21 03:03 私はむしろ石原慎太郎のこういう文章こそハッタリで、もともと臆病だから引き金なんて引けるわけない、と言ったほうが、なんとなく本質的な気がするんですがね。

臆病ってのは、たまたま上の人も書いてますけど、私はDNA云々とかそんな間抜けな話をしたいんじゃないので念のため(ちょっとこの人のあからさまな言い方はびっくりだけど。なんだか気分が悪くなります)。端的に石原自身の特徴として、多くの人がいってますよね。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2012/10/21 06:57 ご紹介ありがとうございます。
ちなみに俺の紹介した斎藤発言はうろ覚えなんで一字一句正確なわけでは全然ありません。対談は週刊金曜日とか世界とかまあ、左派系の雑誌だったと思います。
id:kojitaken氏は「あまり感心しなかった」と言いますが俺的には斎藤本は批判として有益と思います。佐野本への評価は同意です。政策批判ならともかく人格批判というのはうまくやらないと「政策批判できないから人格批判に走ってるんじゃないの」と誤解ないし曲解されかねないし、そうした問題点を佐野は解決できてなかったかなあと。
斎藤本にid:kojitaken氏があまり感心しなかったのは斎藤のしたような石原批判を既に大筋では知っていて、インパクトがなかったからではないでしょうか。たとえ「ありふれた批判」でも本になったことはいいことだったと思いますが。
なお、斎藤本には「ババア発言に抗議した女性団体に卑怯にも石原がなかなか会おうとしなかったこと」など彼の人格への批判もあったと思います。手元にないのでこれまたうろ覚えですが。

nesskonessko 2012/10/21 12:48 慎太郎のその文章は、小説家の作品ですから。やんちゃぶりっこのおぼっちゃまなので、ほんとうに荒っぽいことはできないんじゃないかな。相手が弱い女なら別だけど、ほんもののマッチョが出てくるとおとなしくしてるだけなんじゃないでしょうか。
いまの慎太郎は、作家脳のまま政治家やってるわけで、芸術家が政治で欲望を満たそうとする、たいへん危ういことになっていると思います。早く政界から引退して、小説家に戻ってもらいたい。

bogus-simotukarebogus-simotukare 2012/10/21 14:14 id:nesskoさん
>早く政界から引退して、小説家に戻ってもらいたい。

とは言えタレント議員時代や、「二選目以降の都知事選」はともかく、最初の都知事選は誰も頼んでないのに彼自らでたわけです。石原新党なんてものもできるかわかりませんが、都知事でとどまってればいいのにそういう声が出るのは明らかに彼の希望もあるでしょう。息子を自民党に押し込んだのもそういうことでしょうし。

>ほんもののマッチョが出てくるとおとなしくしてるだけなんじゃないでしょうか。

いわゆる中川派が中川一郎の死によって事実上の石原派になったとき、他派閥の石原派切り崩し工作を止められなかった人ですからね。はっきり言って実務能力とか人望とかあるようには思えませんね。

ottyankoottyanko 2012/10/21 16:31 本多さんが人格否定をしたとしても、それは石原がリアルに行った行為に基づいた批判で、政策否定も実際の行為に対する批判なわけで、故に急所を突けるし論理も構築しやすい。DNAやら血筋がそのまま行為に影響するかどうかは、そもそも科学的な実証もされていない仮説に過ぎない。ただし、習慣は思考を司る事は証明されているので、キチンと取材を行い、その習慣(行為)を分析して突きつければ、急所を突けたかもしれないね。ただ石原の行為って結構捻じ曲げられて伝わっていることも多いので(特にマスコミは白を黒に変えるほど捏造しているので)、入念な検証を行い、更に完璧な人間なんていないのだから良い点悪い点を天秤にかけて、判断すべきだろうね。通常60点で合格と見なさないと誰もTOPになんてなれないよ。個人的には石原は都知事として問題もあるけどギリギリ60点に達していて、橋下は50点にも満たないと思っているけどね。

thatsrighterthatsrighter 2012/10/21 19:23 政治家を批判する時に考慮し無くてはならない人格とは何か、逆に考慮の対象にすべきでない人格批判とは何か、については次に端的に書かれているので一読をおすすめします。

http://www.anlyznews.com/2012/10/blog-post_21.html

nsoderlandnsoderland 2012/10/21 23:16 人格は変わらない。石原慎太郎の人格を裏付ける証拠を羅列してみるとどうなるか。

tachibana55tachibana55 2012/10/22 00:16 kojitakenさんが取り上げた本多勝一氏の石原批判は私も以前読んだことがあり、印象に残っています。あの場合は石原氏自身が文章に書いた、彼の個人的な心情について批判しているのですから、何ら遠慮はいらないでしょう。でも、先にkirikirikunさんが言われているように、それと今回の佐野氏の橋下の記事内容とを同じに見るのならば、それは少し筋が違うような気がします。

私自身は政治家が人格を云々されること自体はありだと思っています。そして、橋下氏本人は、弁護士であるにもかかわらず、相手の人権を尊重していないような言動をしばしば繰り返してきました。だから、彼個人に限定された内容ならば、何を言われていようと私も同情はしません。しかし、佐野氏の記事の内容は彼の他の親族の人たちにも関わってきます。

橋下氏は父親とは幼いころからほとんど別居状態で、父方の親族とも疎遠だったということです。なのに佐野氏は、彼の父親についてのあまり芳しくないエピソードを書き連ね、父方の従兄弟の犯罪歴にまで言及していました。互いにほとんど会ったこともないかもしれない相手でも、血族として同じ素質(DNA)を受け継いでいるであろうから、橋下氏の(よろしくない)人格、人柄を理解するためにはまず、それを書くべきだということのようです。

しかし、そもそも「DNA」が多少共通していたところで、人間の行動のかなりの部分は後天的な学習の産物であり、そこが他の生き物たちと違うところです。(また、佐野氏ではなく、編集部のしたことかもしれませんが、キャッチコピーの中で古臭くて封建的な「血筋」を言うのではなく、「DNA」と言い替えることで、それを免罪されようとしているような姑息ささえ、感じました。)kojitakenさんとは別の方ですが、「反橋下」で知られた某有名ブロガー氏が、この件を「同和差別」の問題に限定して、「あの記事はそういうものではない」と、ツィッターで擁護されていましたが、私はこれはそういう問題ではないと思います。

たとえば、私が橋下氏の父方の親族の一人だったとして、そして年頃の子供でも持っていたら、どんな気持ちになるでしょう。あるいは7人もいる橋下氏のお子さんたちの立場はどうなるのでしょう?橋下氏と同じく、芳しくない「DNA」を持っているということになってしまうのでしょうか?

この程度のことは有名政治家の親族なら我慢すべきことなのでしょうか?私はそうは思えません。自民党の世襲議員などと違って、橋下氏の親族の多くが彼のお陰で現在、特に優雅な生活をしているとも思えないからです。彼等はほとんどが無名の、特に裕福でも権力を持っているわけでもない人たちでしょう。安倍晋三氏への批判で、祖父の岸信介氏の血筋を持ち出すのとは訳がちがいます。そして、橋下氏が会ったこともないかもしれない従兄弟の行動に責任が持てないように、橋下氏が有名人になり、政治家になったことをその人たちが止めることが出来たわけではありません。

こうした点を全く考慮しないで記事を書くような感覚の佐野氏に、橋下氏の人柄や人権感覚を云々する資格があるのかどうか、私は疑問です。

tarari1036tarari1036 2012/10/22 00:26 斉藤貴男は出自にこだわる佐野を批判したとある。確かに政治家を批判するのに政策批判は中心となるべきだが、ユニークな政策を出すのはやはりユニークな人物像があるからである。

斉藤は石原の父親像を調べ上げ、山下汽船の経営者(?)、重役(?)であるかのような風説を自ら振りまいていた石原当人の父は、実は船員の痰つぼを掃除しているような人間だったことを明らかにした。斉藤は父親のDNAを明らかにして石原を批判したのではなく、父親像を明らかにすることを通じて自身をセレブのように飾ったり、セレブのように思い込むことのできる石原の人物像を明らかにした。この批判は本多よりすごい。

石原は湘南のお坊ちゃんのような風をしていたが、その実、父親はその程度の人間だった。
石原は『弟よ』という著作を書いたが、石原は弟、裕次郎の照り返しを受けて自身がセレブでまるで映画に出てくる石原裕次郎同様の人間であるかのように自分で思い込み、人にもそう思わせるのに成功した。『弟よ』は弟と自己を同一視するという錯視のなせる著作であった。

石原はそれだけ自己同一視する裕次郎の妻、北原三枝について一切言及したことがない。北原が在日だからである。血統を着飾った石原にとって自身の家系に韓国人の血が混ざるのを忌避したのである。今さら橋下に対する週朝の記事を「汚い」と言っているが、彼にそんなことを言う資格はない。

kojitakenkojitaken 2012/10/22 00:46 id:tarari1036>
斉藤は石原の父親像を調べ上げ、山下汽船の経営者(?)、重役(?)であるかのような風説を自ら振りまいていた石原当人の父は、実は船員の痰つぼを掃除しているような人間だったことを明らかにした。斉藤は父親のDNAを明らかにして石原を批判したのではなく、父親像を明らかにすることを通じて自身をセレブのように飾ったり、セレブのように思い込むことのできる石原の人物像を明らかにした。この批判は本多よりすごい。

これを書いたのは「斉藤」(斎藤貴男)ではなく佐野眞一ですよね。一応確認まで。

tarari1036tarari1036 2012/10/22 16:06 kojitakenさん、
そうでしたか。私は佐野による石原批判本は読んだことがなかったので、斉藤本に佐野の引用があったのを覚えていたのでしょうか。いずれにしろ、誤まった記憶のご指摘ありがとうございました。

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