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アメリカ、民間メディアはさまざまな見せかけのスキャンダルで、オバマ政権がひそかに求めている、公開の議論を議会を通さないファスト・トラック権限(抜け道権限)からわれわれの注意を逸らしている。
TPPはNAFTAのような『自由貿易』協定であり、われわれの主権を脅かすだけでなく、すべての参加国の主権を、民間管理による企業によるグローバルな『投資家国家』へ取り替えることをあらゆる方面からめざすものだ。『投資家国家』はそれぞれの国民国家による法律の効力を無効にする仲裁法廷をもうけることでその道筋を見出している。
マーガレット・フラワーズ(Margaret Flowers)とケヴィン・ズィーズ(Kevin Zeese)の説明にあるように、TPPにより、アメリカ企業とそのK-Street(ロビー団体が事務所をもうけるワシントンの通り)ロビイストはインターネットの自由、米環境法および規制、国民の健康を守るための州法を無効にするために民主主義の説明責任と立法プロセスの抜け道を求めている。「議会から望むものを得られずに終わった企業の多くは、TPPによる裏口を利用しようと考えている」と上記二人は説明している。エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員もウォール街がTPPのような貿易協定を使ってドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumre Protection Act)を無効にしようとしていると警鐘をうながしている。
しかし、政府を監視するパブリック・シチズンが見るように、TPP(現在ではUS/EU合同の大西洋自由貿易協定とも合併しようともしている)はアメリカの主権を脅かすだけでなく国民を守るすべての国家の主権をすでに「悪名高いinvestor-state(投資家-国家)システム」の拡張により脅かしている。このようなシステムは、正義心の欠けた国際ビジネス調停法廷が、「原子力エネルギー、通貨安定、(主に契約違反による)鉱物、原油の採掘ライセンスの無効化、そして国民の健康、金融安定に関する多くの政府手段、基本的サービス、環境へのアクセスに関する規制」が原因で、国民国家に『国民の税金による』罰金を主にアメリカに拠点を置く、国際企業に支払うことを許すものだ。
「何?あなたはそんなことは聞いていないって?」おそらくそれは民間メディアと主要両政党が、両政党が支持をしている、あなたの国と生活にもっと重大な影響がある問題よりも、目を引く、偽装(ベンガシ『スキャンダル』、IRS『スキャンダル』だ。)に目をむけさせているからだ。
ビジネス法廷システム
TPPが採用されなくても、既存の『自由貿易』とWTOにより、それぞれの国民国家に対する主権、民主主義の説明責任の両方に関して重大な懸念を感じる人もいる。
フラワーズとズィーズは二つの例を挙げている。1)カナダが「地元にグリーンな製品、サービス、職を育成するために、ソーラーパネル、風車に関して地元企業を優遇する」再生可能エネルギープログラムによるWTOルール違反に関するWTO判決。2)Lone Pine Resourcesのカナダ政府に対するNAFTAを元にした、ケベック州、水圧破砕採掘の一時停止に関する2億5000万ドルの損害賠償請求。フラワーズとズィーズは加えて、ハフィントン・ポストのシエラ・クラブ貿易担当のイラーナ・サリヴァン(Ilana Sullivan)の次の言葉を引用している。
2011年末までには、シェブロン(Chevron)、エクソン・モービル(Exxon Mobil)、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)、カーギル(Cargill)は450件の投資家-国家(investor-state)訴訟をアメリカを含む89の国に対しておこしている。アメリカ自由貿易協定、二国間投資条約において、7億ドル以上が企業に支払われ、そのうち70%が自然資源、環境政策に対するものだ。
この国連貿易開発会議の"Recent Development in Investor-State Dispute Settlement"(http://unctad.org/en/PublicationsLibrary/webdiaepcb2013d3_en.pdf)のグラフに示されているように、投資仲裁国際センター(International Center for Settlement of Investment Dispute:ICSID)はNAFTAの批准から目に見えて増加しており、2012年には爆発的な伸びを見せている。

パブリック・シチズンはエクアドルのオクシデンタル石油(Occidental Petroleum)に対する、オクシデンタル石油側が契約違反を犯したことによるエクアドル側からの一方的な契約破棄に関する、(ほぼエクアドル国民半数の年間福祉予算に匹敵する)24億ドルの賠償という気の滅入る判決を指摘している間にも、シェブロン(Chevron)がエクアドルのアマゾン熱帯雨林の壊滅的な破壊と住民への健康被害に関する180億ドルの賠償判決を無効にしようとする二国間投資仲裁法廷による判決が続いた。このエクアドルの被害はあまりにも広範囲に及び、『アマゾンのチェルノブイリ』として"Crude: The Real Price of Oil"というドキュメンタリーでも取り上げられている。
シェブロンはエクアドル共和国vsシェブロン裁判におけるアメリカ第2審(U.S. 2d Circuit Court of Appeal)の後にも、この巨大石油企業はみずからの保護を求めており、3万人にもおよぶアマゾン原住民の膨大な被害者たちは、エクアドルとアメリカ間の二国間投資協定の当事者とは認められないとの理由で、この巨大石油企業は賠償できないとの判決を下した。
この巨大石油企業はシェブロンの180億ドルのエクアドル判決を阻止するためのアメリカ法廷を利用しようという努力は、アメリカ最高裁での下級審への再戻し請求の棄却に終わった。(誤訳かも)。
TPPに対する反抗勢力の増大
パブリック・シチズンは良いニュースと悪いニュースをごやまぜに伝えている。多くの国が集まっている。
オーストラリアはいかなる投資家-国家条項にも署名することを拒否している。ほかの国々もこの考えに続くかもしれない。その間にも、、ブラジル、インド、南アフリカ、エクアドルが自国民の民主的政策決定への脅威となるとして、極端な投資家-国家システムへの世界規模での抵抗が増えている。
本当に有効な反抗勢力となるには、グローバル企業帝国の中心となっているアメリカ国内の民主的勢力を結集が必要だ。TPPではなく、我が国アメリカはNAFTAのような『自由貿易』を破棄し、反対に生存可能な賃金を保障する人権と、持続可能な環境を保障するフェア・トレードの協定へ変えていくべきだろう。そのことこそ、110回、111回議会で導入されたTRADE法(The Trade, Reform, Accountability, Development and Employment Act)が体現するものだ。TRADE法は上院148人、下院9人の支持者がいるが、両院の委員会で押し殺され、投票にのぼることはなかった。TRADE法は、国民は世論調査で『自由貿易』という怪物よりも『フェア・トレード』を望んでいたにも関わらず、賛否の投票にかけられることはなかった。