とんぼの本


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川瀬敏郎 一日一花

2013年05月
2013年5月31日(金)



わらび餅に胡麻を散らして少し焦がす。初夏の侘び。
菓=軒端の月/嘯月(京都)
器=古信楽へたり壺 桃山時代 竺叟直書

2013年5月30日(木)



九十九(つくも)の名は、いつまでも食べあきないことから。
菓=九十九餅/志むら(目白)
器=白磁台皿 李朝時代

2013年5月29日(水)



山深き処で会う優しさはまた格別です。
菓=深山の躑躅/太市(洗足)
器=三彩水禽文輪花皿 明時代

2013年5月28日(火)



稀代の色男、在原業平の忌日。傘の内では勘の鈍ることもあったでしょうか。
菓=業平傘/岬屋(富ヶ谷)
器=古丹波幕掛鉢 江戸時代初

2013年5月27日(月)



新緑の爽やかさは、花の盛りのあとだからこそ。
菓=新樹もち/花乃舎(桑名)
器=祥瑞捻鉢 明時代末

2013年5月26日(日)



岩根に咲く姿に、躑躅のつよさを思います。
菓=躑躅、岩/亀廣保(京都)
器=唐物砂張丸盆 明時代

2013年5月25日(土)



夏を知らせるホトトギスの声。夜に啼くことから忍音とも。
菓=時鳥/一幸庵(茗荷谷)
器=古九谷瓜文皿 江戸時代初

2013年5月24日(金)



手にかくるものにしあらば藤の花松よりまさる色を見ましや(『源氏物語』竹河)
菓=藤きんとん/太市(洗足)
器=七宝扇面巻子文長皿 明治時代

2013年5月23日(木)



卯の花の散るまで鳴くか子規(正岡子規)。ホトトギスは子規、時鳥、不如帰とも書き、死出の旅路の道案内とも考えられていました。
菓=ほととぎす、荒磯/亀屋伊織(京都)
器=堆朱花鳥文盆 明時代

2013年5月22日(水)



皐月の野山は若葉色に。
菓=遠山餅/末富(京都)
器=浅黄交趾兜鉢 永楽即全作 昭和時代

2013年5月21日(火)



小満。そろそろ麦秋の頃でしょうか。
菓=麦代餅/中村軒(京都)
器=古備前四方大皿 桃山時代

2013年5月20日(月)



新緑に映える卯の花。これぞ皐月です。
菓=卯の花巻/二条駿河屋(京都)
器=古染付玉章鉢 明時代末

2013年5月19日(日)



「あがり」の名は尾張徳川家に献上したことから。淡白にしてなめらかな風味。
菓=上り羊羹/美濃忠(名古屋)
器=祥瑞輪花松文皿 明時代末

2013年5月18日(土)



良寛ゆかりの菓子。さらりとした書風を思わせます。
菓=白雪糕/大黒屋(出雲崎)
器=唐物砂張輪花盆 明時代

2013年5月17日(金)



音たてて落ちてみどりや落し文(原石鼎)
菓=落とし文/塩芳軒(京都)
器=古九谷桐文隅切皿 江戸時代初

2013年5月16日(木)



旅愁と恋情の花。
菓=かきつばた/一幸庵(茗荷谷)
器=御室焼杜若文鉢 江戸時代

2013年5月15日(水)



葵祭。上賀茂神社門前の名物。古くは双葉葵にちなみ、二葉餅といいました。
菓=やき餅/神馬堂(京都)
器=葵簾蒔絵菓子器 江戸時代

2013年5月14日(火)



いずれあやめか杜若。水際の美しさはひとしおです。
菓=あやめ、流水/亀屋伊織(京都)
器=唐物輪花屈輪文盆 明時代末

2013年5月13日(月)



目には青葉山ほととぎす初鰹(山口素堂)。鰹の刺身そのもの。
菓=初かつを/美濃忠(名古屋)
器=古染付芙蓉手皿 明時代末

2013年5月12日(日)



紫野の鎮守、今宮神社の還幸祭。門前に茶店が二軒あり、どちらが贔屓か、ちょっとした話題です。
菓=あぶり餅/一文字屋和助(京都)
器=光悦好雑木盆 三好木屑軒作 明治時代

2013年5月11日(土)



唐衣着つつ馴れにし妻しあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ(在原業平)。名菓です。
菓=唐衣/末富(京都)
器=古染付芙蓉手兜鉢 明時代末

2013年5月10日(金)



白藤と紫と。頑是ない幼子のような。
菓=ふじ/川端道喜(京都)
器=康熙五彩唐子文鉢 清時代初

2013年5月9日(木)



麻糸で結わえた五色の環。藤の花房に見立てたもので、熱田神宮の縁起菓子。古くは門口に掛けて厄除けにもしたそうです。
菓=藤団子/きよめ餅総本家(名古屋)
器=唐物松ノ木盆 明時代 村田珠光・津田宗及所持 大徳寺龍光院伝来

2013年5月8日(水)



名にし負はばいざ言問はむ都鳥我が思ふ人はありやなしやと(在原業平)。隅田川は旅愁を誘う場所でした。
菓=都鳥/岬屋(富ヶ谷)
器=七官青磁雲形向付 明時代

2013年5月7日(火)



家康がこの饅頭を兜に盛り、戦勝を祈願したことから、兜饅頭の異称をもつ古き菓子。
菓=本饅頭/塩瀬総本家(日本橋)
器=呉須赤絵兜鉢 明時代末

2013年5月6日(月)



上賀茂神社の競馬会神事は昨日。今日、騎者たちは仲直りするため貴船神社へ詣でます。
菓=くつわ、手綱/亀屋伊織(京都)
器=珠光所持唐物松ノ木盆写 明治時代 益田鈍翁直書旧蔵 大徳寺龍光院伝来本歌ノ添

2013年5月5日(日)



立夏。端午。粽が端午の菓子となったのは、反骨の人・楚の屈原の故事によります。
菓=水仙粽、羊羹粽/川端道喜(京都)
器=龍泉窯青磁十二稜大皿 明時代

2013年5月4日(土)



賀茂祭。みたらし団子の由来は禊の場の御手洗池に浮ぶ水泡。
菓=みたらし団子/加茂みたらし茶屋(京都)
器=銹絵重色紙皿 尾形乾山作 江戸時代

2013年5月3日(金)



柏の葉に子孫繁栄の祈りをこめて。味噌餡か、こし餡か。
菓=柏餅/岬屋(富ヶ谷)
器=宇佐神宮銅造供物器 平安時代末 彫銘「奉寄付 宇佐神社御宝前 源義朝」

2013年5月2日(木)



躑躅も見ごろ。不思議なくらい、いたるところで見かけます。
菓=つつじ餅/越後屋若狭(本所)
器=青磁盞 龍泉官窯 南宋時代

2013年5月1日(水)



木の芽の香には春の終りと、初夏のおとずれを思います。
菓=木の芽田楽/さゝま(駿河台下)
器=田楽箱 初代村瀬治兵衛作 昭和時代

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)


1976年愛媛県生れ。神戸大学法学部卒業。少年期より裏千家茶道を学び、1997年に芳心会を設立。京都、東京で稽古場を主宰しつつ、雑誌の記事やテレビ番組、展覧会等の監修を手がける。2008年、日本博物館協会顕彰。2011年、JCDデザインアワード金賞。2011年、宇和島大賞。著書に『茶の湯デザイン』『千利休の功罪。』(ともに阪急コミュニケーションズ)、『利休入門』(新潮社とんぼの本)など。


とんぼの本は「美術」「歴史」「文学」「旅」をテーマとするヴィジュアルの入門書、案内書のシリーズです。創刊は1983年。シリーズ名は「視野を広く持ちたい」という思いから名づけたものです。
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