とんぼの本


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川瀬敏郎 一日一花

2012年10月
2012年10月31日(水)



香ばしさが栗の味を引き立てます。
菓=焼栗/聚洸(京都)
器=浄法寺塗桃絵盆 江戸時代初期

2012年10月30日(火)



見ための美しさだけがお菓子の価値ではありません。
菓=栗の子/喜久屋(京都)
器=古唐津片口鉢 桃山時代

2012年10月29日(月)



桂は月の名所です。離宮から眺める月を思って。
菓=桂乃露/松林軒豊嶋家(甲府)
器=乾漆朱塗四方皿 鎌田克滋作 現代

2012年10月28日(日)



後の名月は「栗名月」とも。名残の頃は欠けた器も心に添います。
菓=栗きんとん/すや(中津川)
器=三島呼継皿 李朝時代

2012年10月27日(土)



十三夜。陰暦9月13日の月は「豆名月」とも。玉兎は満月の美名です。
菓=玉兎、豆/亀屋伊織(京都)
器=唐物若狭盆 明時代 村田珠光所持 武野紹鴎、織田有楽伝来 有楽直書

2012年10月26日(金)



京都の月見団子はこのかたち。まもなく後の名月です。
菓=月見団子/塩芳軒(京都)
器=根来塗高杯 桃山時代

2012年10月25日(木)



色目の違いで稔りと枯野の風情を表す。見事です。
菓=武蔵野/松華堂(半田)
器=古萩木葉形鉢 江戸時代

2012年10月24日(水)



枯野を吹きわたる風。
菓=松風(武蔵野、月)/亀末廣(京都)
器=乾漆朱塗長皿 現代

2012年10月23日(火)



今日は「霜降」。武蔵野に霜が降ります。
菓=武蔵野/塩芳軒(京都)
器=乾山写武蔵野図皿 永楽即全作 昭和時代

2012年10月22日(月)



鳴子は鳥追いの道具。どちらも瑞穂の国の稔りの象徴。
菓=鳴子、雀/亀屋伊織(京都)
器=駿河細工箕 昭和時代

2012年10月21日(日)



菊の香は仙人の庵の香り。不老長寿が約束されます。
菓=仙家の香/嘯月(京都)
器=色絵秋草文色紙皿 尾形乾山作 江戸時代

2012年10月20日(土)



月と薄がそろえば武蔵野。秋の名どころです。
菓=武蔵野/末富(京都)
器=根来塗鉢 村瀬治兵衛作 昭和時代

2012年10月19日(金)



生砂糖のなかには葡萄の実がそのままに。銘もまことに言い得て妙。
菓=月の雫/松林軒豊嶋家(甲府)
器=竹生島菓子器 近藤道恵作 江戸時代

2012年10月18日(木)



たわわな菊に露がおります。やがては霜に。
菓=光琳菊/末富(京都)
器=漆菊漆絵皿 満田道志作 江戸時代

2012年10月17日(水)



まるまると豊かな菊。琳派意匠の代名詞。
菓=光琳菊/塩芳軒(京都)
器=乾山写色絵菊文手鉢 永楽即全作 昭和時代

2012年10月16日(火)



蘇芳に白をかさねた色目。秋冷です。
菓=菊襲/愛信堂(京都)
器=根来塗隅切盆 室町時代

2012年10月15日(月)



落ち鮎は秋のごちそう。
菓=やき鮎/玉井屋本舗(岐阜)
器=沈金皿 赤木明登作 現代

2012年10月14日(日)



青かったひょうたんが色づくのもこの頃。豊太閤を思わずにはいられません。
菓=千成/吉はし(金沢)
器=蒔絵桐裂地文様菊形高杯 初代石斎作 昭和時代

2012年10月13日(土)



薄には満月よりも弓張の月がふさわしい、そう思うことも。
菓=弓張月、薄/亀廣保(京都)
器=内朱八角菓子盆 三代中村宗哲作 江戸時代

2012年10月12日(金)



伊予の小京都と呼ばれる大洲は、肱川に映る月が美しい町。かつてこのお菓子を「馬の鼻のようにやわらかい」と賞した殿様がいました。
菓=月窓餅/村田文福老舗(大洲)
器=根来塗片身替銘々皿 江戸時代

2012年10月11日(木)



空に月はなくとも、月を愛でることはできます。ほぼ同じお菓子でも、銘が変り、菓子器も変ればまた別の風情に。
菓=夜半の月/吉はし(金沢)
器=彫文菓子皿 川喜田半泥子作 昭和時代

2012年10月10日(水)



きな粉と炒り豆と青海苔による古いお菓子。おいしいと感じたら、茶の湯になじんだということかもしれません。
菓=真盛豆/金谷正廣(京都)
器=染付草花文壺 李朝時代

2012年10月9日(火)



枯野に咲く撫子は可憐なだけでなく、つよさも感じます。
菓=撫子/聚洸(京都)
器=色絵秋草文皿 永楽妙全作 明治時代

2012年10月8日(月)



露をおびてなお美しさをますのが菊。宮中祭祀にも用いられたゆかしいお菓子です。
菓=菊花餅/川端道喜(京都)
器=色絵菊皿 尾形乾山作 江戸時代

2012年10月7日(日)



お菓子屋さんによる銘は「大沢の月」ですが、器とのとりあわせで銘を変えました。芋名月(中秋の名月)にちなみ芋餡で作られているのも嬉しい。
菓=田毎の月(大沢の月)/源水(京都)
器=伊万里青磁角皿 江戸時代初期

2012年10月6日(土)



きわめてリアルに作られています。こうした遊びも茶の湯のうちです。
菓=芋、芋の葉/亀廣保(京都)
器=根来塗隅切盆 桃山時代

2012年10月5日(金)



更待の月。武蔵野に浮ぶ月。
菓=武蔵野/吉はし(金沢)
器=蒔絵菓子重 姫長作 平瀬露香好 明治時代

2012年10月4日(木)



寝待の月。中秋の名月は俗に芋名月とも呼ばれます。
菓=名月/松華堂(半田)
器=蒔絵菓子重 姫長作 平瀬露香好 明治時代

2012年10月3日(水)



居待の月。松露も秋の風物詩。口どけのよさが身上です。
菓=松露/二条駿河屋(京都)
器=蒔絵菓子重 姫長作 平瀬露香好 明治時代

2012年10月2日(火)



立待の月。「月に雁」ではもっとも好きなお干菓子です。
菓=雁金煎餅/亀屋伊織(京都)
器=蒔絵菓子重 姫長作 平瀬露香好 明治時代

2012年10月1日(月)



十六夜の月。重箱にお菓子を詰めてお月見に。
菓=菊、菊ノ葉/亀屋伊織(京都)
器=蒔絵菓子重 姫長作 平瀬露香好 明治時代

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)


1976年愛媛県生れ。神戸大学法学部卒業。少年期より裏千家茶道を学び、1997年に芳心会を設立。京都、東京で稽古場を主宰しつつ、雑誌の記事やテレビ番組、展覧会等の監修を手がける。2008年、日本博物館協会顕彰。2011年、JCDデザインアワード金賞。2011年、宇和島大賞。著書に『茶の湯デザイン』『千利休の功罪。』(ともに阪急コミュニケーションズ)、『利休入門』(新潮社とんぼの本)など。


とんぼの本は「美術」「歴史」「文学」「旅」をテーマとするヴィジュアルの入門書、案内書のシリーズです。創刊は1983年。シリーズ名は「視野を広く持ちたい」という思いから名づけたものです。
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