とんぼの本


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川瀬敏郎 一日一花

2012年08月
2012年8月31日(金)



閏年の今年は今日が二百十日。葛を焦がしただけで、野分の跡を感じさせる。さすがです。
菓=野分/末富(京都)
器=伊部四方足付皿 江戸時代初期

2012年8月30日(木)



口に入れたとたんにほろほろとくずれる食感が銘にふさわしい。夏の名残りに。
菓=絹のしずく/亀末廣(京都)
器=堆朱花鳥文大盆 元時代 東本願寺伝来

2012年8月29日(水)



葛の茶巾絞り。手製です。高校生のときに見た本で、江戸千家のお家元が作られていました。夏の朝茶事には、凝った上菓子よりもむしろ喜ばれるかもしれません。
菓=葛/手製
器=赤杉木地片木銘々皿 井川信斎作 現代

2012年8月28日(火)



水羊羹もいろいろですが、京都ではここ。祇園の夏の風物詩です。
菓=水羊羹/甘泉堂(京都)
器=祥瑞松竹梅文輪花皿 明時代

2012年8月27日(月)



枝豆をすりつぶした「ずんだ」は東北の夏の味。料理屋さんのお菓子は、その場で食べるよさがあります。
菓=ずんだ羹/六雁(東京)
器=南鐐円孔透鉢 吉羽輿兵衛作 現代

2012年8月26日(日)



餅粉の粒が炭酸の泡のよう。黒糖の寒天とのとりあわせ。
菓=宝寿糖/緑菴(京都)
器=黄銅青海盆 現代

2012年8月25日(土)



石竹とは撫子の異名。銘よし味よし見ためよし。子供の頃、憧れのお菓子でした。
菓=石竹/御倉屋(京都)
器=七官青磁松皮菱形皿 明時代

2012年8月24日(金)



黒糖の羊羹と鼈甲色の寒天のとりあわせ。色あいに秋の風情も。
菓=鼈甲羹/花乃舎(桑名)
器=義山(バカラ)切子鉢 昭和時代

2012年8月23日(木)



処暑。とはいえまだまた氷が嬉しい頃。
菓=寒氷/吉はし(金沢)
器=紅銅片木目盆 吉羽輿兵衛作 現代

2012年8月22日(水)



柚餅子のような沖縄の銘菓。柑橘の香り高く、王朝の歴史に思いが到ります。キッパンと読みます。
菓=橘餅/謝花きっぱん店(那覇)
器=琉球沈金食籠 江戸時代初期

2012年8月21日(火)



沖縄のお菓子。口に入れると、その食感に驚くはず。凍らせても美味。
菓=冬瓜漬/謝花きっぱん店(那覇)
器=琉球白蜜陀花鳥文盆 江戸時代初期

2012年8月20日(月)



京都では夏の進物の代名詞。これが届いたら一人前かもしれません。
菓=オレンジゼリー/村上開進堂(京都)
器=バカラ切子手付皿 昭和時代 湯木貞一旧蔵

2012年8月19日(日)



道喜さんのお家芸。今日は藤原定家の忌日です。
菓=三色ねじりちまき/川端道喜(京都)
器=蒔絵菊唐草文大食籠 江戸時代

2012年8月18日(土)



鯨は夏の食べものでした。こちらは上品な鯨羹。道明寺の口あたりは暑中に嬉しいもの。
菓=鯨羹/吉はし(金沢)
器=天啓染付網文皿 明時代末期

2012年8月17日(金)



鯨のように大きく健やかに、との願いがこめられた宮崎の郷土菓子。餡と練り餅のとりあわせが絶妙です。
菓=鯨ようかん/阪本商店(佐土原)
器=九谷青手海老文大皿 江戸時代後期

2012年8月16日(木)



送り火の日。京都の人は「大文字焼き」とは決していわないのですが。
菓=大文字/緑菴(京都)
器=金銅散華盆 江戸時代

2012年8月15日(水)



我々の先輩は、戦中、灯火管制のもとでもお茶を続けました。その頃のお菓子はもっぱら芋の茶巾絞りだったと聞きます。先人への祈りをこめて。
菓=芋きんとん/手製
器=薬師如来蓮弁 高峯山福源寺旧在 平安時代

2012年8月14日(火)



まるめた餡のなかは大徳寺納豆。この頃、山内の各塔頭は大徳寺納豆作りに勤しんでいます。
菓=しの/和久傳(京都)
器=時代椰子実菓子器 江戸時代後期

2012年8月13日(月)



お盆を迎えて。
菓=蓮、流水/亀屋伊織(京都)
器=般若心経に蓮文蒔絵盆(東大寺修二会連行衆盆写) 江戸時代後期

2012年8月12日(日)



貝殻を開くと琥珀羹。大徳寺納豆の渋さは、いかにも京都の夏です。
菓=浜土産/亀屋則克(京都)
器=葛桶 宗旦好 十代飛来一閑作 江戸時代後期

2012年8月11日(土)



竹筒に入れるのは、葛羊羹のほうが古風です。
菓=葛竹流し/末富(京都)
器=古備前丸陶板 桃山時代

2012年8月10日(金)



粟羹のぷつぷつとはじけるような口あたりが、とくに夏場に好まれました。
菓=観世水/二条駿河屋(京都)
器=古清水網文手鉢 江戸時代

2012年8月9日(木)



餡のかわりに青梅。その風味が身上です。
菓=琥珀/御倉屋(京都)
器=李朝白磁台鉢 李朝時代

2012年8月8日(水)



水の意匠です。葛の底の緑の餡が涼気をもたらします。
菓=水の面/嘯月(京都)
器=仁清写色絵海松文船形鉢 永楽和全作 明治時代

2012年8月7日(火)



立秋。麦こがしをかためたもの。その香ばしさに、秋が待たれます。
菓=麦羹/吉はし(金沢)
器=古染付花唐草文四方皿 明時代末期

2012年8月6日(月)



鮎も大きくなる季節。遠からず落ち鮎です。
菓=鮎ちまき/川端道喜(京都)
器=時代蒔絵網文四ツ手菓子器 江戸時代

2012年8月5日(日)



夏みかんの果汁を寒天で寄せたもの。アマミカンと読みます。
菓=甘美羹/二条駿河屋(京都)
器=義山(バカラ)藍切子平鉢 明治時代

2012年8月4日(土)



葛製の羊羹です。銘も素晴しい。
菓=夏木立/松華堂(半田)
器=初期伊万里山水文扇形皿 江戸時代初期

2012年8月3日(金)



涼しい色。こうした何気ないお菓子のほうが、作るのも選ぶのもむつかしい。
菓=青楓/御倉屋(京都)
器=義山(春海バカラ)鬼切子鉢 明治時代

2012年8月2日(木)



瀧は寒天、青楓は和三盆製です。
菓=瀧、青楓/末富(京都)
器=円明院盆 桃山時代 河瀬無窮亭旧蔵

2012年8月1日(水)



八朔。8月の名のついたお菓子を。
菓=葉月/川端道喜(京都)
器=南鐐七宝文菓子皿 竹影堂栄真作 昭和時代

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)

茶人 木村宗慎(きむら そうしん)


1976年愛媛県生れ。神戸大学法学部卒業。少年期より裏千家茶道を学び、1997年に芳心会を設立。京都、東京で稽古場を主宰しつつ、雑誌の記事やテレビ番組、展覧会等の監修を手がける。2008年、日本博物館協会顕彰。2011年、JCDデザインアワード金賞。2011年、宇和島大賞。著書に『茶の湯デザイン』『千利休の功罪。』(ともに阪急コミュニケーションズ)、『利休入門』(新潮社とんぼの本)など。


とんぼの本は「美術」「歴史」「文学」「旅」をテーマとするヴィジュアルの入門書、案内書のシリーズです。創刊は1983年。シリーズ名は「視野を広く持ちたい」という思いから名づけたものです。
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