TPP参加損失1041億円 生産額減は738億円
県は20日、日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加し、関税が撤廃された場合、県内の農林水産分野でマイナス1041億円の影響が出るとの試算結果を初めて公表した。平成22年の県内の農林水産物生産総額2639億円を前提に試算すると、その3割弱の738億円が1年当たり減少するとした。それに伴う地域経済への影響は303億円減と見積もった。本県農業への影響の大きさが浮き彫りになった。
同日の県議会代表質問で自民党の桜田葉子議員(福島市)の質問に県が示した。
政府が3月に公表した影響額の試算方法と同じく、農林水産物への影響に対策を講じず、関税が即時撤廃されることを前提とした。本県の生産額が1億円以上の14品目(農産物7品目、林産物1品目、水産物6品目)を試算対象とし、22年の農林水産物産出額をベースに計算した。
最も影響を受けるのはコメで、791億円(22年生産額)が396億円に半減する。国内生産量の約3割が輸入品に置き換わり、残る国内生産も価格が下落するとした。
牛乳乳製品は飲用乳生産の大部分が北海道産に置き換わるとして、110億円(同)の全額が減少すると見込んだ。さらに、豚肉は101億円(同)の77%に当たる78億円、牛肉は155億円(同)の48%の74億円減額となる。農産物7品目の減少額は698億円。本県特産のキュウリ、モモなどは政府の試算品目に含まれておらず、県の試算でも対象外。
林産物は、輸入品増加で合板など木材生産が73億円(同)の11%の8億円が減る。
水産物関係では、サバが19億円(同)の61%の12億円、カツオ・マグロ類が40億円(同)の26%に当たる10億円が減少する。水産物6品目の減少額は32億円だった。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以前の農林水産物産出額を基に試算しており、現在の本県農林水産業の影響額とは異なるという。
政府は農林水産物33品目を対象に計算し、国内生産額7兆1000億円から4割超に当たる3兆円が減少するとの試算結果を公表している。
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地域経済への影響額の試算も独自にまとめた。生産額の減少に伴う輸送業、食品加工、農業生産法人などの売り上げ減などをまとめた県産業連関表(平成17年)を踏まえ算出した。農産物分野は289億円減、林産物は5億円減、水産物は9億円減の計303億円だった。
※TPP 環太平洋戦略的経済連携協定の略称。アジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加する国を中心とした自由貿易協定(FTA)の一種。原則として全ての物品の関税を撤廃する。政府は3月、自動車など鉱工業品の輸出が2兆6千億円増えると試算。一方、農林水産物生産額は3兆円減ると試算している。日本は農業分野でコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目を「聖域」と位置付け、関税撤廃の例外とするよう求める。
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