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広報担当に研究者 理系研究成果、学外へ発信 東北大
 | 記者説明会で司会を務める長神さん(左)=仙台市青葉区の東北大病院 |
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大学間競争を勝ち抜こうと、東北大の理系研究科が研究者を広報担当者として積極的に採用している。建学以来の伝統が「研究第一」の東北大だが、「せっかくの成果が学外に十分に伝わっていない」との反省を踏まえた。担当者らは科学全般の基礎知識や専門領域の研究経験を生かし、大学と一般社会をつなぐ橋渡しの役割を担う。
仙台市青葉区の星陵キャンパスに立地する東北メディカル・メガバンク機構。特任教授で広報を担当する長神風二さん(38)は、研究者と市民の関係などを考える「科学コミュニケーション論」が専門だ。 東大大学院で生物物理化学を専攻したが、研究者と社会とのつながりが希薄なことなどに問題意識を抱き、日本科学未来館(東京)などで展示企画に携わった異色の経歴を持つ。 2008年からは、東北大大学院医学系研究科でイベントや記者発表のコーディネートに取り組んできた。12年のメガバンク機構発足と同時に移籍した。 記者発表では事前に発表文の原稿を添削し、専門用語を一般語に置き換えたりする。今も医学系研究科や大学病院の発表に立ち会い、長神さんは「記者や市民が知りたい情報は何かを考え、研究者から引き出すよう心掛けている」と言う。 そんな長神さんの影響もあり、08年度は9件だった医学系研究科のプレスリリースは、12年度には37件と大幅に増えた。 「東日本大震災後は被災者の協力で進める研究が多い。より説明責任が求められる。広報への先生方の意識もだいぶ変わった」と長神さん。 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の助教で広報担当の中道康文さん(34)は、九州大理学研究院時代に生物研究の傍ら広報業務を担当した。「研究の意義や苦労が分かる研究者が広報をサポートすると、研究発表がより深みを増す可能性もある」と言う。 脳神経細胞を専門とする大学院医学系研究科教授の大隅典子さん(52)は広報室長を兼務する。「研究は得意でも説明が苦手な研究者は少なくない。広報の知識やスキルのある実動部隊が大学の価値を高める」と指摘する。 東北大本部も広報体制の充実に取り組む。12年度から26学科・研究科の広報責任者の連絡会議を定期開催し、情報共有に務める。東北大広報課は「各学科・研究科で培われた人的資源や広報ノウハウを持ち寄り、マッチングさせて全学の発信力を高めたい」と話す。
◎東北大研究者2人にロシアから資金最大5億円/若手教育など支援
ロシア政府が世界の優れた科学研究者に資金を提供し、基礎研究や国内の若手研究者らの教育に取り組むプロジェクトのリーダーに、東北大から川添良幸名誉教授(材料情報学)と大学院理学研究科の大谷栄治教授(高圧地球物理学)が選ばれた。 川添氏はクリーンエネルギーの水素燃料となる液体水素の貯蔵技術、大谷氏は地球内部の物質状態解明が研究テーマ。ロシアから若手研究者を東北大に招き、共同研究と教育指導に当たる。 プロジェクトは2011年に始まり、リーダーには研究費として年100万ドルが3〜5年間、最大で500万ドル(5億円弱)が提供される。過去に選ばれた日本人研究者はノーベル化学賞を受賞した米ボストン大名誉教授の下村脩氏だけだった。 13年は世界で計42人が選出され、このうち日本人は川添、大谷両氏を含め3人。
2013年06月21日金曜日
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