米大統領 「核削減方針」の背景は6月20日 20時55分
アメリカのオバマ大統領は、訪問先のドイツのベルリンで演説し、アメリカとロシアの間で削減を進めている戦略核兵器の一段の削減を目指すとともに、射程の短い戦術核についても新たに削減に取り組む方針を打ち出しました。
オバマ大統領が今回、戦略核兵器の一段の削減を打ち出した背景には、みずからが掲げる「核なき世界」の実現に向けて核軍縮の動きを改めて活性化し、任期中に具体的な成果を挙げたいという強い意欲があります。
オバマ政権はベルリンでの演説を、4年前、オバマ大統領がチェコのプラハで「核兵器なき世界」を打ち出した「プラハ演説」、そしてエジプトのカイロでアメリカとイスラム社会との融和を訴えた「カイロ演説」に続く3つ目の重要な外交演説と位置づけました。
プラハで行った演説で、将来的な「核なき世界」の実現を掲げたオバマ大統領は、みずからが主導してロシアとの新たな核軍縮条約「新START」を締結し、ノーベル平和賞も受賞しました。
さらに去年のアメリカ大統領選挙でも、戦略核兵器のさらなる削減を公約に掲げましたが、この1年ほどはロシアのプーチン大統領との関係が冷え込んだうえ、オバマ大統領自身、内政への対応に追われて具体的な進展がなく、核軍縮の機運は停滞していました。
このため、オバマ大統領は、2期目の任期が切れる3年半後までに核軍縮の分野で実績を残すためにも、早急に何らかの具体的な提案を示してロシアとの交渉を進める必要に迫られていました。
また、アメリカが率先して核軍縮に取り組む姿勢を示すことで、核開発を続けている北朝鮮やイランに対しさらなる圧力をかけるねらいや、国防予算の削減を迫られるなか、維持費のかさむ核兵器を核抑止に必要なギリギリのレベルまで削減し、通常兵器などに予算を回した方が合理的だという判断もあったものとみられます。
ベルリンを演説の会場として選んだ背景には、ちょうど50年前にケネディ大統領が当時の西ベルリンで市民に連帯を訴える演説を行うなど、歴代のアメリカ大統領が歴史的な演説を行ってきた舞台であることに加え、かつての東西冷戦の象徴だったベルリンで核軍縮を表明することで、「冷戦構造からの完全な脱却」を国際社会にアピールしようというねらいもあったものとみられます。
また、最近は、アメリカの情報機関による個人情報の収集問題や、内戦が続くシリア情勢への対応の遅れなどから、国際的にアメリカの指導力を問う声が強まっており、核軍縮の動きを主導することで、改めて指導力を発揮したいという思惑もあったものとみられています。
ロシアは消極的な姿勢
アメリカのオバマ大統領が戦略核兵器の一段の削減を打ち出したことについて、ロシア政府は、アメリカがヨーロッパで進めるミサイル防衛を巡る対立が解消されていないとして、現段階では消極的な姿勢を示しました。
ロシア外務省のリャプコフ次官は、2010年に米ロ間で調印された新たな核軍縮条約で定められた配備済みの戦略核弾頭の削減目標の1550発をアメリカが達成していないことを念頭に、「まず現行の条約を履行する必要がある」と述べ、アメリカに目標を達成するよう促しました。
そのうえで、アメリカとロシアが対立するミサイル防衛について、「双方が受け入れ可能な解決策を見つけることが必要だ」と述べて、この問題でアメリカが譲歩することが前提条件になるとの考えを示しました。
さらに、戦略核よりも射程の短い戦術核の削減についても、ロシアにとって不利な状況が続いているとして、まず、アメリカがヨーロッパに配備している戦術核の削減に取り組むべきだという考えを示しました。
アメリカは、ヨーロッパで進めるミサイル防衛についてイランからのミサイル攻撃に対応するためだと説明していますが、ロシアは核抑止力を低下させるとして反対する姿勢を示しています。
プーチン政権は、アメリカとロシアの核戦力のバランスが崩れることを警戒し、オバマ政権に対して、ミサイル防衛の問題も含め、ロシアの意見を十分くみ取るよう求める立場を示したものとみられます。
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