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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第29回】 2013年6月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
みわよしこ [フリーランス・ライター]

「子どもの貧困対策法」は貧困の連鎖を断ち切れるか?
衆議院・厚生労働委員会での攻防(下)
――政策ウォッチ編・第29回

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「カネは出さずに、口と手は出す」?

 筆者はこの一連のなりゆきに対し、

 「カネは出さずに、口と手は出す、ということ?」

 という見方をしている。手を出す分だけ、

 「カネは出さずに、口を出す」

 よりは良いのかもしれない。しかし、その「手」の確保や仕組みづくりにだって、「カネ」は必要なのだ。しばしば見受けられる「現金給付より現物給付のほうが」という意見に対しても、「現物給付にだってカネはかかるし、たぶん現金給付の方が安くつく」と感じている。

 結局のところは、

 「困窮している当事者にカネを渡す」

 が、悪の根源のように見られているのであろう。しかし、コミュニティづくりも、人間関係づくりも、役に立つアドバイスを得ることも、当事者にその分の「カネ」を渡せば実現できるではないか。さまざまな研究は、現在の生活保護基準に加えて1~2万円の費用があればよい、と示している。

 「子どもの貧困対策法」に実効性を求めるならば、少なくとも、貧困家庭の状況を直接改善するだけの「カネ」が必要なのではないか。筆者は、生活保護基準引下げと生活保護法改正に対し、民主党を含む多くの政党が賛成したことに、なんとも釈然としないものを感じている。自民党・公明党・日本維新の会が賛成することは、当然の成り行きではあるだろう。しかし、その他の政党は、なぜ賛成してしまったのだろうか?

 次回は、参議院で行われている生活保護法改正案の審議と、困窮者支援に関わっている支援者の意見を紹介する。生活保護法改正案などの法案は、可決された後、どのような近未来をもたらしうるだろうか?

<お知らせ>

本連載に加筆・修正を加えた「生活保護リアル」(日本評論社)が7月19日に刊行予定。既にAmazonで予約注文開始中。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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