「カネは出さずに、口と手は出す」?
筆者はこの一連のなりゆきに対し、
「カネは出さずに、口と手は出す、ということ?」
という見方をしている。手を出す分だけ、
「カネは出さずに、口を出す」
よりは良いのかもしれない。しかし、その「手」の確保や仕組みづくりにだって、「カネ」は必要なのだ。しばしば見受けられる「現金給付より現物給付のほうが」という意見に対しても、「現物給付にだってカネはかかるし、たぶん現金給付の方が安くつく」と感じている。
結局のところは、
「困窮している当事者にカネを渡す」
が、悪の根源のように見られているのであろう。しかし、コミュニティづくりも、人間関係づくりも、役に立つアドバイスを得ることも、当事者にその分の「カネ」を渡せば実現できるではないか。さまざまな研究は、現在の生活保護基準に加えて1~2万円の費用があればよい、と示している。
「子どもの貧困対策法」に実効性を求めるならば、少なくとも、貧困家庭の状況を直接改善するだけの「カネ」が必要なのではないか。筆者は、生活保護基準引下げと生活保護法改正に対し、民主党を含む多くの政党が賛成したことに、なんとも釈然としないものを感じている。自民党・公明党・日本維新の会が賛成することは、当然の成り行きではあるだろう。しかし、その他の政党は、なぜ賛成してしまったのだろうか?
次回は、参議院で行われている生活保護法改正案の審議と、困窮者支援に関わっている支援者の意見を紹介する。生活保護法改正案などの法案は、可決された後、どのような近未来をもたらしうるだろうか?
<お知らせ>
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