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生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第29回】 2013年6月21日
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みわよしこ [フリーランス・ライター]

「子どもの貧困対策法」は貧困の連鎖を断ち切れるか?
衆議院・厚生労働委員会での攻防(下)
――政策ウォッチ編・第29回

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質疑を行う山井和則衆議院議員(民主党・無所属クラブ)。同日、10:53からの質疑においては、主に水際作戦に関する参考人への質疑も行った(衆議院インターネットTVよりキャプチャ)

 山井氏は、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案と同時に衆院で可決された「子どもの貧困対策法案」について、審議によって、

 「実効性のある法案になったと思う」

 と評価した。そして、生活保護世帯の子どもの高校進学率が、全日制に限定すれば未だ「67%」という低い水準にあることを指摘し、貧困の連鎖を断ち切るための施策の重要性、貧困率を下げて進学率を上げることの必要性、中卒では良い職業に就けない現実、さらに高等教育の機会も確保する必要性について述べた。山井氏は、今回の3つの法案について、

 「よい形での結果が出る必要があると思う」

 とも述べた。

 田村厚労相は、生活保護世帯の親世代に対し、資格取得の支援・能力開発・職業訓練を行う事業が既に実施されていることを述べた。また、常用雇用への転換が必要であることにも言及した。常用雇用を行った企業に対して支援するということである。

 「しっかりと、(家計の)支え手の親が就労できるようにしていきたい」

 と、田村厚労相は述べた。確かに、不安定就労からの脱却が困難なままでは貧困・生活保護からの脱却は困難であろう。

 さらに、子どもたちの学習支援に関しては、

 「学びたいと思っている子どもが高校進学できるように」

 法案を提出したとし、貧困の中で育つ子どもが「上に行ける」環境づくりの重要性を強調した。しかし、高等教育の機会を確保することに対しては、

 「言い回しが要注意」

 と、必要性を明言しなかった。田村厚労相によれば、一般の家庭でも大学・短大への進学率は50%強なので、貧困世帯の子どもたちに対してだけ「大学へ行く」を確保したのでは、「バランス」が問題になるというのである。とはいえ、貧困世帯の子どもたちに対して「大学進学をしてはいけない」と言うことには問題がある、ともいう。そして、厚労省が5月13日、生活保護世帯が子どもの大学等進学のために預貯金することを認める方針としたことに言及した。

 しかし一方で、生活保護基準は引き下げが決定しており、特に母子世帯に対しては引き下げ幅が大きい。現在でも、余裕のある生活をしているわけではない人々が、どうやって、子どもの進学のために預貯金できるというのだろうか?

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、2匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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