山井氏は、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案と同時に衆院で可決された「子どもの貧困対策法案」について、審議によって、
「実効性のある法案になったと思う」
と評価した。そして、生活保護世帯の子どもの高校進学率が、全日制に限定すれば未だ「67%」という低い水準にあることを指摘し、貧困の連鎖を断ち切るための施策の重要性、貧困率を下げて進学率を上げることの必要性、中卒では良い職業に就けない現実、さらに高等教育の機会も確保する必要性について述べた。山井氏は、今回の3つの法案について、
「よい形での結果が出る必要があると思う」
とも述べた。
田村厚労相は、生活保護世帯の親世代に対し、資格取得の支援・能力開発・職業訓練を行う事業が既に実施されていることを述べた。また、常用雇用への転換が必要であることにも言及した。常用雇用を行った企業に対して支援するということである。
「しっかりと、(家計の)支え手の親が就労できるようにしていきたい」
と、田村厚労相は述べた。確かに、不安定就労からの脱却が困難なままでは貧困・生活保護からの脱却は困難であろう。
さらに、子どもたちの学習支援に関しては、
「学びたいと思っている子どもが高校進学できるように」
法案を提出したとし、貧困の中で育つ子どもが「上に行ける」環境づくりの重要性を強調した。しかし、高等教育の機会を確保することに対しては、
「言い回しが要注意」
と、必要性を明言しなかった。田村厚労相によれば、一般の家庭でも大学・短大への進学率は50%強なので、貧困世帯の子どもたちに対してだけ「大学へ行く」を確保したのでは、「バランス」が問題になるというのである。とはいえ、貧困世帯の子どもたちに対して「大学進学をしてはいけない」と言うことには問題がある、ともいう。そして、厚労省が5月13日、生活保護世帯が子どもの大学等進学のために預貯金することを認める方針としたことに言及した。
しかし一方で、生活保護基準は引き下げが決定しており、特に母子世帯に対しては引き下げ幅が大きい。現在でも、余裕のある生活をしているわけではない人々が、どうやって、子どもの進学のために預貯金できるというのだろうか?